◆268.人魚と少女 ページ30
.
アズール「僕は
この力で全てを支配してやる
僕をバカにした奴らを
今度は僕が跪かせてやるんだ
『だーかーらー!
努力の方向性が間違ってるっての!』
僕はアズール寮長本人にそう言った。
目の前で膝を抱えて座っているアズール寮長。
僕は深く溜息を吐いた。
アズール「……貴女は、」
『ん?』
アズール「……Aさんですか?」
『何を今更。僕は正真正銘のAだよ』
アズール寮長は顔を上げる。
そして、静かに涙を流し始めるアズール寮長。
アズール「……あの時、人間の大人に捕まって、」
『……』
アズール「凄く、怖かったんです。
ジェイド達ともはぐれて、どうなってしまうのだろうかと、不安で仕方がなかった。
そんな時、貴女は僕を網の中から出してくれた」
『……』
アズール「また会えたら……そう思いながら、完璧を続けてきたんです。
僕をバカにした奴ら、イジめた奴らを跪かせて、人になれる薬を手に入れて、陸の生活に慣れたら会いに行こうと思って、ずっと貴女達を探していた!」
するとアズール寮長は僕の手を掴んだ。
アズール「どうして……どうして何処にも居なかったんですか?
貴女は、一体何者なんですか?」
『僕は……』
本当に、あのフロイド先輩が魔法薬で見せていた夢が本当でも、僕は何も言えない。
だって、僕は……僕達は……
『何も、覚えていないんだ』
アズール「え……」
『僕とイヴは、この世界に来る前の記憶が殆ど無いんだ。
僕達は何者で、どこに住んで、誰に出会ったかなんて僕達は覚えていないんだ』
アズール「……そん、な……」
「じゃあ、僕は……」と、僕の手を離すアズール寮長の手を僕は握り直した。
『だからって、手放す気はない』
アズール「!」
『ここから出よう。アズール寮長。
君にはやってもらいたい事があるし、ギザ歯双子も君のこと心配してるだろうし。
それに……』
アズール「?」
『もう、ここに来てはいけない。
じゃないと君が死んでしまうかもしれないから』
アズール寮長は目を張る。
そして、大粒の涙を流しながら微笑んだ。
アズール「……やはり、貴女は、Aさんですね」
『いや、最初からAなんだけど……』
すると、ゆっくりと闇が消えていく。
めまぐるしい歪みも、欠けた光も。
僕達の世界から消えて行く。
.
1055人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冬雪(プロフ) - そよんさん» コメントありがとうございます。こういう嬉しいコメントがあるたんびに頬が緩みます (2020年5月9日 14時) (レス) id: 629036c9bb (このIDを非表示/違反報告)
そよん(プロフ) - こういう素敵な作品に限って、途中で終わったりすることがあるから、読みながら「あーそろそろ続きないかも…」って思ってたら「やだ!まだある、まだある!!!?」って全私がうれしみの舞(?)笑。素敵な作品をありがとうございます!! (2020年5月9日 13時) (レス) id: 4362c83576 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - クリきんとんさん» ご報告ありがとうございます。これからも頑張ります (2020年4月29日 4時) (レス) id: 629036c9bb (このIDを非表示/違反報告)
クリきんとん(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいております!269話のフロイドくんの名前が1部フライドになってます、、、、気の所為だったらすみません!!これからも応援しています (2020年4月29日 1時) (レス) id: 57857ad3bd (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - らて。さん» ご報告ありがとうございます。楽しんでもらえて嬉しいです (2020年4月28日 21時) (レス) id: 629036c9bb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:冬雪 | 作成日時:2020年4月24日 1時