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◆179.無責任 ページ36

トレイ.



『トレイ先輩トレイ先輩トレイ先輩!』

トレイ「そんなに何度も呼ばなくても聞こえてるぞA」



大食堂で昼食を食べていると、慌てた様子のAが俺の元に駆け寄って来た。



『えーと、さっきデュースが殴り合いしてたので湿布を取りに保健室に行ったんですけど』

トレイ「待て」

『ん?』

トレイ「デュースが殴り合いしていたのか?」

『あ』




しまったと言わんばかりに自分の口を塞ぐA。




『ど、どうか聞かなかったことに……』

トレイ「……」

『僕とイヴのために怒ってくれたんですよ!だからデュースには罪がないわけで!』

トレイ「……」

『せめて何か言って!!』



あわあわとしているAが珍しくて黙っていたが、デュースが理由もなしに喧嘩しないことくらい知っている。

Aの様子に吹き出すと、ピタッ、止まりジト目で俺を見る。



トレイ「悪い悪い。お前が慌ててるのが珍しくて」

『トレイ先輩ってほんと意地悪』

トレイ「デュースの事は目を瞑っててやるよ。
そんで?保健室に行ったら、どうしたんだ?」

『あ、そうそう……』



するとAは俺の耳元に顔を寄せる。




『実は……』

トレイ「……」



Aの吐息が微かに俺の耳を掠める。

それが何故か異様に恥ずかった。




『リドル先輩が保健室で寝ていたんですよ』

トレイ「え……リドルが?」



そう言って俺から離れるA。



トレイ「わかった。今行く」

『いや、先輩はゆっくりしといてくださいよ』

トレイ「は?」

『僕はただ幼馴染のトレイ先輩なら何か知っているかな、と思ってきたんですけど……先輩も知らないっぽいし、松葉杖の人は安静にしといてもらわないとだし』

トレイ「でもリドルが心配だ」

『ですよねー。
あ、なら僕がリドル先輩の様子を見ときます』

トレイ「Aが?」

『5限が終わった休み時間に様子を見ときます。
帰りはケイト先輩か、エーデュースに任せればいいですよね』

トレイ「しかし……」

『そこまで僕は君に頼るつもりはないよ』




そう言ってにっこり、と笑うA。

そこまで気を遣ってくれるAは本当に優しい。



無責任なほどに




『じゃ、僕はそろそろ教室に戻りますね』

トレイ「……ああ」




頼りなさそうな小さな背中を見送る。



未だ耳に残る熱から背けるように、俺は席を立った


.

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冬雪(プロフ) - アルファさん» ご報告ありがとうございます。これからもご愛読の方をお願いします (2020年4月17日 15時) (レス) id: e3ba6a1386 (このIDを非表示/違反報告)
アルファ - 161話で、八つ当たりはジャックすればいいになってました (2020年4月17日 11時) (レス) id: 2d5813c050 (このIDを非表示/違反報告)
アルファ - とっても面白くて、何回も読み返したくなる面白さ・・・ヤバいです! (2020年4月17日 11時) (レス) id: 2d5813c050 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - アルファさん» ご報告ありがとうございます (2020年4月16日 18時) (レス) id: e3ba6a1386 (このIDを非表示/違反報告)
アルファ - 186話でレオナがレオナ先輩ってさいごにいってました (2020年4月16日 17時) (レス) id: 2d5813c050 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:冬雪 | 作成日時:2020年4月12日 3時

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