【刀剣乱舞】妖物語 (ページ9)

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102.可哀想な彼らページ9

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『本当に大丈夫ですか……？』

「大丈夫、もう平気ですよ。主は心配性だな～」

演練場から急いで本丸に戻って傷を負った男子達の手入れをして、特に傷の具合がエグかった鯰尾くんを心配すると折れていた鼻は元通りになっていて平気そうに笑う鯰尾くんは元気に馬小屋に行ってしまった。

本丸に戻ってくるまで痛いとか辛いとか言わない彼らに心配と少しの恐怖感を覚えた。

出陣の時は全員無傷で帰ってくるから気づかなかったけれど、山姥切さん曰く、彼らにとって傷を負うことは当たり前、だと思っているらしい。

それは、なんだか……

『……可哀想』

「何が可哀想なんですか？」

突然問いかけられた声に驚く。

恐る恐る振り向くと前田……いや、誰だこの子。

一見、前田くんに似ているけれど、よくよく見てみると雰囲気が違うというか何かが違う。

「あ、そういえば初対面でしたね。申し遅れました粟田口、藤四郎兄弟の一人、平野と申します」

『平野、くん……？』

「長兄である一護一振に会うのは堅く禁じられておりました故、挨拶が遅れてしまいました。ご無礼をお許しください」

『(……まだ隠れてる人がいるのか)』

私が審神者になってから二ヶ月半経ったが未だに顔合わせが出来ていない刀剣男士がこの本丸にいる。

特に粟田口の藤四郎兄弟は一護一振という人が兄弟に会わせることを頑なに拒否しているらしく、この本丸にどれくらいの粟田口がいるのか把握出来ていないのが現状である。

『こちらこそ把握出来てなくてごめんね』

「主君が謝る必要はありませんよ」

『でも私の前に出て来て大丈夫なの？お兄さんに私に会うの止められているんでしょ？』

「止められてはいますが、知っていますか？主君」

『？』

「約束や決まりは時に破るものでもあります。前代の主君に教えられた言葉です」

『祖父が……？』

「僕は長兄を正しいと思っていますが、前代の主君も正しいと思っています。貴女がこの本丸に来てから誰も間違っておりません。貴女を傷つけた薬研兄さん達も貴女を信じた鯰尾兄さん達も。なのでどうか悪く思わないでくださいね」

……知っていた

この本丸の刀剣男士達がやった事は場合によっては許し難いものもあるけれど、現に私はもう過ぎた事として許しているし、彼らにとって仕方のない事だった。

誰も悪くない、なんて最初から知っていた。

『……最初から悪く思ってないよ』

私がそう言うと平野くんは安心したように笑った。

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