115.主命 ページ22
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『(困ったなぁ……)』
罰をください、なんて言われても彼らにとって何が罰で何が褒美なのか皆目見当がつかない。
『えっと……じゃあ一週間内番で馬小屋とか』
「それではあまっちょろいです!」
『十分な罰だと思うけど……』
「駄目です!もっと……休みなしの出陣や内番とか主君が受けた以上の傷や仕打ちを受けるとか……」
『そしたら前田くんの身体が壊れちゃうよ?』
前田くんは目を張った。
『本当は罰なんて受けなくていいよ。全部私が許すから』
「……貴女は、善悪の区別がつかないのですか!?世界の全てが貴女ではないのです!貴女が許したとしてもその他の者は僕を許さないかもしれないじゃないですか!!」
『でも、主の命令は絶対なんでしょ?』
「……っ!!」
すると前田くんは虚ろな目をしながら下を向いた。
そして前田くんから涙が零れ落ちた。
「どうか……どうか僕を……あまやかさないでください……っ!」
前田くんは前屈みになって顔を両手で覆って嗚咽を出しながら泣いた。その姿はまるで小さな子供のようだった。
「これ以上貴女に絆されてしまうのは嫌だ……自分が駄目になっていくのを実感してしまう」
泣いてしまった前田くんを心配そうに見る平野くんは前田くんの背中を撫で続けた。
私は怠くて重く感じる身体を動かして二人を抱き締めた。
『駄目になればいいじゃないかな』
「でも……っ」
『別に良い子でなくたっていいよ』
……やばい、頭が朦朧としてきた
身体に上手く力が入らない。
『間違えちゃうのは仕方のないことなんだよ。嫉妬しちゃうのも仕方ないんだよ。人間なんて自分より身分が高い人や才能が恵まれてる人にしょっちゅう嫉妬してるし時には大好きな人が誰かに盗られてしまいそうになると嫉妬する人もいる』
咳が出そうなため、前田くん達からすぐに離れる。
『ケホッ……だから……前田くんだけじゃないから大丈夫だよ。私はどんな貴女達でも受け入れる自信があるからコホッコホッ……ケホッ……』
「主君……?」
『(やば……熱が上がって……)』
そのまま私は布団の上に倒れてしまう。
「主君!」
「酷いお熱だ……薬研兄さんを呼んできます!」
薄れゆく意識の中、前田くんの私を呼ぶ声が響いていた。
大丈夫。少し眠いだけだから。寝たら少し楽になってるから。
目を閉じて、私は意識を手放した
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戦国娘(プロフ) - 作品楽しみに読んでます!あと、一つ報告が.....一護ではなく一期一振というので正しくは一期です!! (2020年1月20日 0時) (レス) id: 008b2d0f5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬雪 | 作成日時:2019年6月15日 0時