【刀剣乱舞】妖物語 (ページ12)

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105.蓄積された感情ページ12

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何気なく本丸の廊下を歩いていた。

平野くんが淹れてくれたお茶を飲んで少し気持ちを落ち着かせた私は自室に戻ろうとしていた。

でも、それは一瞬のことだった

突然伸びてきた手は私の口を抑えながら部屋に引きずり込む。

そして床に押し倒され、首元に冷たい物を当てられ確認すると薬研くん達が持っているような短い刃物だった。

『っ！』

「大声を出したら即斬ります」

視線を上へと向けると、そこにいたのは前田くんだった。

突然の事に状況の把握が出来ないでいる私は前田くんに言われるまで大声を出すということは頭になかった。

「……やっと、一人になってくれましたね主君」

『え……？』

「貴女の人の良さは十分承知しています。その人の良さは元は物であった刃物でさえも惹きつけ、貴女の周りにはいつの間にか貴女を慕う者ばかり増えていきましたね」

『前田くん……？』

「いつの間に、僕の兄弟を誑かしたんですか？」

『っ！そんなこと……っ！？』

「煩いです」

誑かした覚えがなくて否定しようとした時、前田くんが持っていた刃物の刃先が私の頬に当たり、痛みが走る。

「良い子振るのはやめてください。目障りです」

『……っ』

凍ってしまう程の冷たい視線で私を見る前田くん。

演練の時と様子と違う前田くんは酷く冷酷で、言い返せる勇気も押し退ける勇気もない私はただ恐怖で震えるだけしか出来ない私は何も言えないでいた。

「……僕はずっと我慢してきたんです」

『我慢……？』

「僕は兄弟が何より大好きなんです。お互い依存をして誰か一人でも欠けたら寂しいと思っている」

すると前田くんは自分の短刀の刃先を下に向けて柄を両手で持つ。前田くんの目は黒く虚ろで酷く危なっかしい。

「……でも、それは違った。依存しているのは僕だけだったということに気付いたんです」

『……それは、違うと思う』

「貴女に何が解るんですか？僕は兄弟しかいないと思ってるのに他の兄弟達はどうですか？平野は鶯丸様の傍で茶を嗜み、厚兄さんは長谷部様と仲が良くて、薬研兄さんは不動様と太鼓鐘様と話していらっしゃる」

『……前田くん』

「この腹の奥が煮えくりそうな感覚を、尽きることのない独占欲を、積もり続ける憎悪を、貴女には理解出来ますか？」

前田くんが抱いているものは立派な嫉妬だった。

『(青江さん、見つけてしまいました)』

彼が、れっきとした＂嫉妬魔＂なのだ

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