91.刀物語 其ノ拾壱 ページ45
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和泉守兼定
刀剣男士のみんなは男の人でも髪が長い人がいる。
それは今目の前にいて縁側で腕を組んで眠っている和泉守さんも例外ではない。
私は傍に寄ってしゃがんで和泉守さんの御髪を凝視する。
男の人なのに女の人みたいに艶やかな黒髪で背中に一杯溢れる程のサラサラとした油気のない長髪。女として憧れる髪質で、私はその髪に触れたくてウズウズしてしまう。
「……そんなに見られちまうと穴に空いちまいそうだぜ」
『ぅわあっ!?』
「驚くこたーねぇだろ」
『起きてたんですか!?』
「今起きたんだよ」
そう言って欠伸をする和泉守さん。
穴が空いてしまいそうな程見ていたのか、私。恥ずかしい。恥ずかしいよ。穴があったら入りたいくらいだよ。
「んで?俺の何見てたんだよ」
『あ、えっと……御髪を少し』
「あ?髪?髪がどうしたんだよ」
『とても綺麗な御髪だな、と見惚れていましたすみません』
「なんで謝んだよ」
私が目を逸らしていると、
「……触るか?」
和泉守さんの言葉に私は勢いよく顔を上げた。
『い、いいんですか!?』
「断る理由も嫌がる理由もないからな」
『では……し、失礼します』
恐る恐る和泉守さんの御髪に手を伸ばし、指を通すと一度も引っかかることもなく下まで梳くことが出来た。
『す、凄いっ!こんなに長いのに絡まってないっ』
「偶々だっつーの。戦や内番していれば自然と絡まってるし」
『でもこんな綺麗な黒髪、なかなかいませんよ』
「そんなもんか?」
『私より良い髪質してますし、触ってると気持ちいいですし』
羨ましいなぁ、と見ていると不意に和泉守さんが私の髪に手を伸ばして指を絡ませる。
「あんたの方が良い髪質してんじゃねぇか」
『そ、そうでしょうか?』
「なんていうか……柔らかい?男と女の身体の造りは違うと言うが髪まで違うんだな」
……髪に違いはないと思われます
男の人もサラサラしてたら柔らかい時もあるから。
それでも、和泉守さんに褒められると何故だか自分の髪が誇らしいと思える。
『和泉守さんに髪を褒められるのは、なんだか嬉しいです』
「そんなんで嬉しいのか?」
『だって和泉守さんに褒められるんですよ?堀川さんに自慢出来るくらいですよ』
私がそう言うと和泉守さんは少し照れたように、
「……そうかよ」
そう言って目を逸らして頬を掻いた。
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冬雪(プロフ) - たまごやきさん» コメントありがとうございます。毎回題名が変わる小説ですがこれからも読んでいただけると幸いです (2019年6月9日 9時) (レス) id: 319301ee3c (このIDを非表示/違反報告)
たまごやき - こんにちは。今までコメントしていなかったのですが、いつも作者様の作品を読ませて頂いてます。あんスタの方から読み始めたのですが、どちらもとても引き込まれてしまいとても好きです。これからも作者様のペースで更新してくださると嬉しいです。 (2019年6月9日 9時) (レス) id: 7f42fd7b15 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 幸別愛友さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年5月25日 15時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - すごくいいお話です…(*´^-^`*) その文章能力わけてほしいくらいです…(>д<。) これからも更新頑張って下さい!楽しみにしてます!! (2019年5月25日 12時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 瑠花さん» 他人が作ってしまうと自分が作った物語が思い通りにいかなくなります。誰も語彙力がないことを馬鹿になんてしませんよ。馬鹿にする方が馬鹿なんですから (2019年5月24日 22時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬雪 | 作成日時:2019年5月20日 21時