49.初鍛刀の刀 ページ3
大和守.
僕は新撰組の刀。僕は沖田総司の刀。
沖田くんの刀であったことを誇りに思ってる。けれども沖田くんは普通の人間より強いのに普通の人間より弱い人間だったからすぐに死んでしまった。
このまま、沖田くんだけの刀でいたかった
けれど、
「初めまして」
気付いた時には、新しい主が目の前にいた。
新しい主は女人で、沖田くんより細くて小さくて、脆そうで、それでも沖田くんと同じ人間だった。
差し伸ばされた手を握れば温かい。これが人間特有の体温。
……僕は彼女に従うしかなかった
彼女に顕現されてから一週間。縁側に座って散っていく桜を静かに眺めていると床が軋む音が聞こえて振り返ると彼女が、主が立っていた。
『大和守さん、身体には慣れましたか？』
「……まあまあ、かな」
『それは良かったです』
戦で自分を振るって、畑仕事をしたりして、お腹が空いた時は温かいご飯を食べて、眠い時は布団で眠って。
刀であった時は想像もしなかった人間の生活。清光と話して、堀川や兼定と内番して、長曽袮さんと手合わせして。こんなに楽しくて、胸の辺りが温かくなる感覚はなんていうのだろう。
「……ねぇ、主」
『はい？』
「主はなんで僕を顕現したの？」
ずっと疑問に思っていたことを聞くと、主は僕の傍に座った。
『みんなに会わせるためですよ』
「みんな？」
『私が二代目というのはご存知ですよね？』
「うん」
『前代の時、大和守さんは既に居たそうです。けれども前代は亡くなってしまったので政府が審神者を派遣しました。貴方は三人目に派遣された審神者の時に折れてしまい、鍛刀の資源にされてしまったそうです』
「……じゃあ、僕は二振り目？」
『そうなりますが私にとっては一振り目で初鍛刀の刀です』
……だからあの時、主は喜んだのかな
顕現された時、主は腰を抜かす程喜んだ。変な人間だなぁ、と思いながらも僕で喜んでくれたのは嬉しかった。
「(じゃあ僕を欲したのは誰かのため？)」
「あ、安心してください！私がいる限り貴方は折れさせませんし折れませんから！」
「(強欲というか無欲というか……)」
『……えっと、大和守さん？』
「主って変だね」
『え』
「変。うん、変だよ。凄く変」
強欲か無欲かわからない人間なんて変だ。だから僕は主のことをいつまでも理解出来ないのだ。
僕にとって彼女は��意味不明��な存在なんだ
.
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冬雪(プロフ) - たまごやきさん» コメントありがとうございます。毎回題名が変わる小説ですがこれからも読んでいただけると幸いです (2019年6月9日 9時) (
レス) id: 319301ee3c (このIDを非表示/違反報告)
たまごやき - こんにちは。今までコメントしていなかったのですが、いつも作者様の作品を読ませて頂いてます。あんスタの方から読み始めたのですが、どちらもとても引き込まれてしまいとても好きです。これからも作者様のペースで更新してくださると嬉しいです。 (2019年6月9日 9時) (レス) id: 7f42fd7b15 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 幸別愛友さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年5月25日 15時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - すごくいいお話です…(*´^-^`*) その文章能力わけてほしいくらいです…(>д<。) これからも更新頑張って下さい！楽しみにしてます！！ (2019年5月25日 12時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 瑠花さん» 他人が作ってしまうと自分が作った物語が思い通りにいかなくなります。誰も語彙力がないことを馬鹿になんてしませんよ。馬鹿にする方が馬鹿なんですから (2019年5月24日 22時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年5月20日 21時
