検索窓
今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:82,598 hit

95.私の、意中の相手でした ページ49

.


「お見送り、ありがとうございます」

『いえ……』


山姥切さんと活撃さんを玄関先で見送る。


『(何故だか気持ちが晴れない)』


私は扉に手を伸ばす活撃さんの袖を引っ張った。

振り返った活撃さんは驚いたような表情をしていたが優しく私の手を掴んで離さない。


『……あの、私……貴方のことを忘れていると思うんです』

「……忘れている?」

『失礼なのは十分承知です!でも、私……本当に最近までこの本丸の前代、祖父をずっと忘れていたんです!祖父の仏壇に飾ってある写真にはずっとモザイクがかかって……名前も、いつ死んだのかもずっと忘れていたんです……』

「……!」

『でも加州さんや山姥切さんのおかげで思い……だし……て』


そこまで言うと私は活撃さんの表情に背筋が凍ったのです。

先程の優しい表情とは一転して、酷く冷たく、今にでも彼に殺されてしまうのではないかと怖くなる。


「……おのれ……政府め……」

『え……』

「この人をどれだけ不幸にしたら気が済むんだ」

『活撃さん……?』


活撃さんに握られた手が痛い。


「おい、審神者」


すると山姥切さんが私と活撃さんの間に入って来て私から活撃さんの手を離す。

そして活撃さんは我に返ったのか、また酷く傷ついた表情を浮かべて泣きそうになっている。


「ご、ごめんなさい……っ」

「自分が傷つくなら、もう我慢するな」

「……我慢なんて」


活撃さんは拳を強く握り締める。


「……うちの主はあんたが思ってる程、弱くはないんだ」

『山姥切さん……』

「肝が座っていて、芯が強くて、すぐ泣くが俺達を受け入れ、どうしようもなく優しい奴だ」

『(そんな風に……思っていてくれたんだ……)』

「精神だけはそこら辺のゴリラと変わらん」

『そんな風に思ってたんですか!?』


少し感動したのにゴリラと変わらないと言われ少しショックを受けた私は強いと言われた精神は一気に砕け散った。


「……山姥切さん」

『えっと……活撃さん』

「!」

『ゴリラは流石に傷つきましたが、私は刀剣男士の彼らの過去と怒りと傷を何度も受け入れました』

「……貴女」

『どんなに酷い真実でも、どんなに優しい過去でも受け入れる覚悟は出来ていますから』


活撃さんは一度目を張ると、また泣きそうな表情を浮かべるけれど今度はどことなく報われたような笑みを浮かべている。


「……私と、貴女は幼い頃からの知り合いで」

『え……』


「私の、意中の相手でした」


.

終幕、準備→←94.縁談破棄



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (43 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
105人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

冬雪(プロフ) - たまごやきさん» コメントありがとうございます。毎回題名が変わる小説ですがこれからも読んでいただけると幸いです (2019年6月9日 9時) (レス) id: 319301ee3c (このIDを非表示/違反報告)
たまごやき - こんにちは。今までコメントしていなかったのですが、いつも作者様の作品を読ませて頂いてます。あんスタの方から読み始めたのですが、どちらもとても引き込まれてしまいとても好きです。これからも作者様のペースで更新してくださると嬉しいです。 (2019年6月9日 9時) (レス) id: 7f42fd7b15 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 幸別愛友さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年5月25日 15時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - すごくいいお話です…(*´^-^`*) その文章能力わけてほしいくらいです…(>д<。) これからも更新頑張って下さい!楽しみにしてます!! (2019年5月25日 12時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 瑠花さん» 他人が作ってしまうと自分が作った物語が思い通りにいかなくなります。誰も語彙力がないことを馬鹿になんてしませんよ。馬鹿にする方が馬鹿なんですから (2019年5月24日 22時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:冬雪 | 作成日時:2019年5月20日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。