68.紫之創 ページ20
紫之.
花野先輩と会話が出来ない
いろいろと話を聞いてみたいなのだけれど、みんなが自分から話しかけに行っているから僕も行きたいのだけれど、以前あのような事が起きてしまったため謝りたいのは山々なんだけれども、なんて話しかければいいのかわからない。
廊下を歩く先輩を遠くから見ることしか出来ない。明星先輩みたいに所構わず話しかけられることが出来たらどれだけ楽なことだろうか。
『……紫之くん？』
「え……」
歩いていた筈の先輩はいつの間にか足を止め僕の方を見ていた。
『どうしたそんな所でカサカサ……あ、間違えた』
「？」
『ゴソゴソだった』
「……それを言うならコソコソなんじゃ」
『あーそれだ』
「この頃言葉間違いが多くて」と変わらず無表情で淡々と饒舌に話し出す花野先輩。
それにしても��コソコソ��を��カサカサ��や��ゴソゴソ��と言い間違いするとは面白い間違いだな。
「ふふ、先輩凄い間違いしますね」
『まぁ小さい頃��恋愛成就��を��恋愛ジョーンズ��と勘違いしていたくらいだからな』
「それって最近じゃないんじゃ……」
『……恋愛ジョーンズの方が恋愛成就しそうじゃないか』
明後日の方向を見て誤魔化す先輩。僕は思わず吹き出す。
面白くて、そして可愛くて。なんだか妹を見ているようで。
「(でもちゃんとした歳上なんだよね……)」
『元気そうだな紫之くん』
「え？」
『天満くんや真白くんが心配していたぞ？��この頃創が花野先輩を見るたんびに溜息吐いているんですけど何かありました？��と聞いてくるもんでな僕も心配していたんだ』
「そ、そうなんですか？すみません……」
『まぁでも君が元気そうで良かった』
先輩の言葉に顔を上げると微笑んだ先輩の顔が目の前にあってドキリとしてしまう。そして先輩の伸びて来た手が僕の頭を優しく梳く。
『……あ、間違えた。すまん紫之くん嫌だったから今すぐにでも風呂に入りに帰ってくれ』
「え！？い、嫌じゃないですよ！逆に嬉しい、ですので……」
『そうか？弟を愛でる癖でついやってしまった』
「……弟？」
『うん。僕の自慢の弟』
先輩の弟さんはこんな風に愛でられているのかと思うと、なんだか胸の奥がグルグルする。
「……でしたら僕のこと弟扱いしてくれても構いませんよ？」
『え、でも年頃の男子にそんなこと……』
「構いません！」
『……君って意外とグイグイくるな』
.
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年4月17日 23時
