64.大神晃牙 ページ16
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『大神くん』
「……なんだよ」
『呼んでみただけだ』
ジト目で僕を睨む大神晃牙。
警戒心を出しながら僕から距離をとっていた彼は今では警戒心は出しながらも距離はとらないというところまで成長した。素晴らしき成長に感涙である。
『しかし呼んでみただけ、という台詞はなんだか今からラブコメが始まりそうでドキドキしないか？』
「しねぇよ」
『ワクワクしないか？』
「まったく」
『ゾクゾクしないか？』
「テメェの気持ち悪さにゾクッとはする」
『女子に気持ち悪いはないだろ』
同級生で唯一いじり甲斐があり話しやすい彼はどうやら僕と話すのは不愉快きわまりないらしいがちゃんと応えてくれるし僕の渾身のボケもキレのあるツッコミで返してくれる。
朔間先輩と言う通り彼は律儀なのだ。
『ところで大神くん』
「なんだよ」
『以前僕は君のこと��大神さん��と呼んでいたのに突然��大神くん��などと馴れ馴れしい呼び方で話しているのだが君はその点について何も言ってこないんだな』
「あ？別になんとも思わねぇよ」
『……何故？』
「別に普通だろ。同級生なんだから。先輩とか後輩は敬語とか面倒臭ぇ言葉使うけどよ、同い歳の奴に敬語とかあったりなくてもいいし俺はそもそも必要とは思わねぇし」
『……そうか』
不器用だけれど彼の言葉に自然と頬が緩んだ。
すると大神晃牙は何故か僕を凝視した。なんだその鳩が豆鉄砲を食らったような目は。明日は雪やら槍やら降りそうだなと言いたげな顔は。
『なんだその顔は』
「……お前、表情筋動いたんだな」
『僕だって人間だ。表情くらい動く』
「……最初からそんな風に笑って愛想良くしておけばよかったんじゃねぇの？」
『誰にでも愛想を振りまく女にはなりたくない』
「可愛くねぇ……」
否定すればいつもの眉間に皺を寄せた顔になる大神晃牙。僕の前ではその��いつもの顔��でいてくれればいいのだ。突然��知らない顔��になられては困るからな。
『可愛くなくて結構。僕は愛でられるより愛でる方だからな。大神くんも愛でられたくなった時はいつでも僕に甘えてきても構わないんだぞ？というかその時にツンデレを発揮してくれても構わない』
「お前に甘えることなんて一生ねぇし俺はツンデレじゃねぇって何度言えばわかんだこの被害妄想炸裂朴念仁」
僕と彼の攻防戦は続く。
そう、予鈴が鳴るまで続くのだ
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年4月17日 23時
