43.刀物語 其ノ参 ページ45
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厚藤四郎
審神者部屋で春休みの宿題を片付けていると、廊下からドタドタと走るような音が聞こえた。何事だろうかと障子の方に目を向けると障子を勢い良く開けたのは厚くんだった。
「大将っ！」
『……ど、どうしたの？厚くん』
「なんで俺を近侍にしてくれなかったんだ！」
ズカズカと中に入って来て私の肩を掴んで前後に揺さぶる厚くんはどうやら荒ぶっているようだ。私も現在進行形で厚くんに荒ぶられている。
一旦落ち着いてもらうため座布団を出して厚くんを座らせる。
『えっと……近侍に、なりたかったの？』
「おう！」
『なんで？』
「罪滅ぼし」
『え？』
「許してもらえないだろうから近侍になって俺が大将を支えたかったんだよ」
厚くんは下を向きながら淡々と口に出す。
「大将のこと斬っちまったし、ずっと疑ったし、俺今凄く罪悪感がヤバいんだよ……なんか、まるで身体がその罪悪感で埋め尽くされてるみたいに隙間がないくらいに俺は俺を許しきれない」
『……やっぱり』
「……」
『厚くんは優しいね』
「……は？」
顔を上げた時の厚くんの顔は何言ってんだこいつ、という顔をしていて思わず苦笑いをする。
『私に対して罪悪感を抱くなんて優し過ぎるよ』
「あ、当たり前だろ！俺は大将の刀になっちまったんだ！大将がこのまま俺達の主にならずに逃げてくれればこんな事にはならなかったのに……！」
『厚くんはなにも心配はいらないよ』
「え……」
『だって私、厚くんのこと許さないから』
「……っ」
私がそう言うと厚くんは酷く傷ついた顔をして下を向いた。太腿に乗せている拳が震えてるのがわかると私は厚くんの頭の上に手を置いた。
『だから私の好きにさせてもらうね』
「……？」
『近侍は山姥切さんに任せているから心配ないよ。罪悪感なんて抱かなくていいよ。ただ私のこと主と認めてさえくれればいいんだよ。思ったより簡単なことでしょ？』
「でも……」
『……もう何も、怖いものなんてないんだよ』
そう言うと目を張る厚くん。
もう政府から派遣された審神者もいない。それだけが彼らの救いだと言えるのだろう。
『罪悪感の隙間に��私��を埋めればいい。そうすれば罪悪感なんていつかどこかに消えちゃうから』
「そこは少しくらい残しとこーぜ……」
『それもそうだね。じゃあ罪悪感三割私七割で』
「それじゃ半分もねぇじゃねーか」
そう言った厚くんはおかしそうに笑った。
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ぬっこ(プロフ) - 胸から刀を出すと言う表現がとても素敵です。続き楽しみにしてます(^-^) (2020年1月15日 21時) (
レス) id: da10b377d5 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 紫鶯さん» ありがとうございます。続きをお楽しみください。 (2019年5月16日 20時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
紫鶯 - とっても面白かったです！ (2019年5月16日 13時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年4月29日 9時
