36.無知は罪 ページ38
.
「気を取り直そう。お主は何も知らないんだな」
『申し訳ございません……』
「謝らんで良い。前の主が居なくなってからここに来る審神者は天下五剣やレア刀以外には目を向けることはなく俺達だけが大切にされたが俺はそれが嫌だったのでな」
『……それって差別なんじゃ』
「そう差別だ。俺は希少価値が高いらしいし鶴丸や一護一振や鶯丸は入手困難な刀でなかなか手に入らないらしい」
……どうも難しいな
政府の役人の人から説明を受けた時も何が何やらで難しかったし三日月さんの話も難しい。希少価値なんて言うけど売るわけでもないし入手困難なんてゲームか何かなんだろうかと思ってしまう。
加州さんの方を見ると私が思った事が解ったのか何故か頭を抱えて溜息を吐かれた。何故だ。
『……なんだか難しいです』
「……そうか」
『みんな強いのになんでそんな差別するんですか』
「……!」
『だって薬研くんや厚くんは凄く素早くて鯰尾くんなんて私を持ちながら身軽に動いてて、三日月さんも屋根の上にひとっ飛びでしたし……』
三日月さんは驚いたような顔をすると立ち上がって私の元に歩み寄ってその大きな手で私の両頬を包んでは私の顔をじっと見つめてくる。
美形に顔をじっと見られるなんて恥ずか死ぬ
「……お主のような考えを持った審神者と早く出会っていれば俺達は幸せになれただろうか」
『え……』
「流石彼奴の孫だ。考える事まで一緒だし顔立ちも少々似ている。特に耳の形なんてそっくりだ」
『あの……』
すると犬を撫で回すように頭をわしゃわしゃと撫でたり頬を優しく揉んだりと好き放題に触る三日月さんに動揺が隠しきれないでいる私。
そして満足したのか私から手を離すと三日月さんが腰に携えていた刀を私に差し出す。
『……?』
「俺を折ってくれ」
『……え』
「好きに折ってくれても構わない。庭にある大きな岩に叩きつけても良し、熱で溶かしても良し、とんかちやらで叩きまくっても良しだ」
突然言われた言葉に私は呆然とする。
その間に三日月さんは自分が座っていた場所に戻って座布団の上に座り当然のように微笑んでいる。
そして今度は小狐丸さんや鶴丸さんや一護さんも長谷部さんも、堀川くんも小夜くんもせっかく治した五虎退くんも私の手の上に刀を乗せていく。私じゃ抱えきれなくて畳の上にゆっくり降ろす。
「皆、折ってほしいそうだ」
そして私はやっと堪忍袋の緒が切れた。
.
122人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぬっこ(プロフ) - 胸から刀を出すと言う表現がとても素敵です。続き楽しみにしてます(^-^) (2020年1月15日 21時) (レス) id: da10b377d5 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 紫鶯さん» ありがとうございます。続きをお楽しみください。 (2019年5月16日 20時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
紫鶯 - とっても面白かったです! (2019年5月16日 13時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:冬雪 | 作成日時:2019年4月29日 9時