21.傷だらけ ページ23
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「本丸案内するからついて来て」
『はい!』
部屋から一先ず出て縁側を歩いていると視界の端に映った白い物体に目を向けた。
そこに一匹の白い小さな虎がいた。何故ここに虎?しかも小さいくてなんだか可愛らしい。
『と、虎!?』
「あーそれ、五虎退の虎だね」
『五虎退?』
「藤四郎兄弟の一人。刀剣男士の中にお供を連れた刀剣が稀にいるんだよ」
『刀剣男士は奥が深いんですね』
しゃがんで虎に自分の手の匂いを嗅がせ警戒している様子ではないので頭を撫でようとした時、
「さ、触らないでください!」
『!』
「お願いですから虎さんには触らないで……!殴るなら僕を殴ってください!」
『な、殴る!?そんなことしないよ!』
「嘘をつかないでください……!い、今虎さんに手をかざしていたじゃないですか!」
『普通に撫でようと思っただけなのに……』
おかしなこともあるものです。薬研くんより小さい子が私に刃物を突き出しているのです。この状況は非常にマズイ。
『それより君なんでそんなにボロボロなの?病院とか行った?包帯から血が滲んでるよ?』
「俺達に病院なんかないよ」
『え……じゃあどうやって治すんですか?』
「アンタが治すの」
『え!?私医学は全く知識が』
「じゃなくて霊力で治すの。よく見てみ?アイツの刀もボロボロで今にでも折れちゃいそうでしょ?」
『は、はい』
「あーいうのはアンタが治すの」
『ど、どうやってですか……?』
「霊力が低い審神者は時間をかけて打ち粉で叩いて手入れをするらしいけどアンタの場合は霊力が高いからすぐにでも治せるんじゃない?多分」
多分かぁ……
私にそんな力があるなんて全く実感が湧かないのだけれど治せるのなら治してあげたいのだけれど男の子の警戒心が強すぎて近寄り難いのが現状だ。
……さて、どうしたものか
『えっと……取り敢えず私が治せるらしいから君の刀を少し貸してもらえないかな?すぐ終わるらしいから』
「や、やだ……」
『でも痛いんだよね?』
「やだ……やだやだやだやだ!!」
何かの感情が限界を達したのか男の子の顔は歪んで恐ろしい程におぞましい程に病みきっている。
するとそんな男の子を見て怯んだのか私の傍にいた虎は私の後ろに隠れてしまい身体を震わす。
「落ち着けって五虎退!」
「僕の……僕の虎さんを返してよぉぉおお!!」
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ぬっこ(プロフ) - 胸から刀を出すと言う表現がとても素敵です。続き楽しみにしてます(^-^) (2020年1月15日 21時) (レス) id: da10b377d5 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 紫鶯さん» ありがとうございます。続きをお楽しみください。 (2019年5月16日 20時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
紫鶯 - とっても面白かったです! (2019年5月16日 13時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬雪 | 作成日時:2019年4月29日 9時