16.あの子の霊力 ページ18
加州.
『……お婆ちゃんの願いはなんだったんですか?』
〈だカラそれを教えて何にナル〉
『何になるとかじゃないんです。私はお婆ちゃんが願った願いを知りたいんです』
足にも手にも黒い手がキモイくらい纏わりついて動けなくて必死に抵抗しているとAが強情な疫病神から婆さんの願いを聞き出そうとしていた。あの子の意図がわからないでいると何故か自然と霊力が高くなっていく。
……懐かしい霊力
あの子の方を見ればあの子から懐かしい霊力が伝わってくる。
『本当は願いなんてなかったんじゃないんですか?お婆ちゃんの身体を勝手にのっとったんじゃないんですか?』
〈下等生物がドの口を聞く!我ハ神であるゾ!〉
『それがなんなんですか!!』
その瞬間、温かい光が俺達を包んだ。
あの子の前髪で隠れていた片目が見える。恐ろしい程真紅で泣きたいくらいその色が懐かしかった。
『私は相手が神様だからって謙遜する程良い子ではないし神様はなんでも正しいとは思ってない』
〈な、なんダトォォォオオ……っ!〉
『誰だって失敗します。自分が正しいと思ってしまうことだって多々ありますし間違いだと気づかないことだってあります。それは人間も動物も同じで神様だって同じだよね?』
〈……ウルサイ……ウルサイ五月蝿いウルサイうるさいウルサイうルサいウるサイ!!!〉
怒りで顔を歪む程我を失った疫病神はAに攻撃を仕掛けるが全ての攻撃をあの子に弾かれてしまう。
いつの間にかあの子の足に絡みついていた黒い手は浄化され、あの子は疫病神の元に歩み寄る。
〈来るナ!来るな、来るナァ!!〉
『だから教えてあげる』
〈ヒエッ〉
静かにAは疫病神に指をさした。
『貴方は間違っている』
それは言霊に似たような言葉だった。
あの子の一つ一つの言葉に霊力に篭っているようだった。
〈うぁ……あァぁぁあアああ!!違う!!我は決して間違ってナドいないノだ!!我は神ダ!我は正しいノだ!!〉
『間違っていることに気づかない時点で間違ってるんだよ!』
〈!!〉
『……だから、どうか』
Aは疫病神の前で土下座した。
『お婆ちゃんを返してください』
Aは泣いていた。泣きながら狼狽えている疫病神に願った。
『どうか、私の……お婆ちゃんを返してください』
ゆっくりと闇が消えていく。
めまぐるしい歪みも。欠けた光も。
俺達の世界から、消えていく
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ぬっこ(プロフ) - 胸から刀を出すと言う表現がとても素敵です。続き楽しみにしてます(^-^) (2020年1月15日 21時) (レス) id: da10b377d5 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 紫鶯さん» ありがとうございます。続きをお楽しみください。 (2019年5月16日 20時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
紫鶯 - とっても面白かったです! (2019年5月16日 13時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬雪 | 作成日時:2019年4月29日 9時