白い花 ページ31
例に漏れずエスニックなティーカップに注がれた温かい紅茶が、Aの目の前に置かれた。
｢──美味しい」
｢でしょ？僕のが上手いんだ」
｢え？」
｢紅茶淹れるの」
そう言ってAの向かいに座りながら、瑞季は笑った。隣の梅野を見れば、いくらかすねたような顔をしていた。それを見て瑞季はふふ、と笑った。
｢弟に淹れ方教えたのも僕だし」
｢へえ、そうなんですか」
二人の淹れた紅茶を両方飲んだことがあるが、Aに二者の違いはよくわからなかった。しかしあえてそう口に出すこともない。
｢すごくお菓子持ってきたね」
瑞季が、Aの持ってきたコンビニ袋を指差した。
｢ん、ああ…親がたくさん買っていけって。多すぎましたね」
｢いっぱいあっても困らないでしょ。僕、お菓子大好きだし」
(正直それは、イメージ通りだ)
｢ところで、Aくんはさ…｣
ぐい、と瑞季がこちらに身を乗り出してきた。彼の耳にかけていた黒髪が、さらりと垂れて頬にかかる。
｢なんですか｣
Aは思わず身を引いてしまう。一瞬彼が梅野に見えてしまい、うろたえた。しかしやっぱりよく見ると別人で、なんとも後味の悪い感じがする。
｢絵、得意なんでしょ｣
｢はい、まあ｣
｢どんな絵を描くの？｣
｢え、ええと｣
(あなたの弟ばかり描いています)
｢風景画が、メインですかね…｣
｢へえ、いいなあ、絵が描ける人って。僕なんて、絵は全然だめでね｣
Aはこっそり考えた。
(兄弟そろってあの画力なのだろうか。見てみたい気もする)
瑞希はねえ、と微笑んだ。
｢よかったら見せてよ、絵｣
梅野ばかりを描いたスケッチブックなんて見せられるわけがない。
｢あー…今日は持ってきてないです｣
｢そう？残念｣
んー、と瑞季考えるようなしぐさを見せる。それからぱっと明るい表情になって言った。
｢僕の事、描いてみてくれない？｣
｢｢えっ｣｣
Aと梅野の声が重なる。え？とお兄さんが首をかしげる。
｢あれ、ダメかい？｣
｢ええと｣
最近のAはずっと梅野だけを描いている。暇な時間があればほとんどを彼との時間に費やしているし、その分彼を描いた絵もたくさんある。
それはAにとって二人だけの時間であり、二人の愛をこっそりと確かめあうような儀式だった。ここしばらくは梅野以外の人間を一度も描いていないAにとって、彼以外を描くことはタブーのように感じられた。
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天泣tenkyu(プロフ) - 読みやすい わかりやすい 面白い 、の三拍子ですね！笑めちゃくちゃ読むの楽しくて一気に全部読んでしまいましたぁ…… (2018年10月11日 20時) (
レス) id: daeb79a243 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(金欠）(プロフ) - 面白かったです。お疲れさまでした！ (2018年2月26日 5時) (レス) id: f13eb61b67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 面白いのに、勿体無いと思います。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 読みづらい。 (2018年1月21日 11時) (レス) id: 581099bb6b (このIDを非表示/違反報告)
小梅 - めっっっちゃおもろいです!!二人が再会できて良かったです!!更新頑張ってください!!q(^-^q) (2017年12月27日 17時) (携帯から) (レス) id: 76f089da6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺぺこ | 作成日時：2017年10月30日 0時
