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実は翼の両親、かなりの大食漢(大飲漢?)であった。
両親は毎日デリバリーでまるまると肥えた人間を注文しては、その血という血を干からびるまで吸い付くしていた。そのペースはおよそ一日に百人だ。人間で言えば、大量のジャンクフードを毎日貪り食っているイメージである。
それを見た翼少年は両親を反面教師にし、あんなデブにはなるまいと決心した。…ここまではよかった。
だがもうひとつ決心してしまった。けしてこれから人間の血を吸うまい、と!
干からびてしわしわになった憐れな人間たちに、あろうことか同情してしまったのだ。
こうして翼のベジタリアン(?)生活が始まった。食うものは大体トマト、たまにザクロやイチゴなど。飲み物はワインかデスソースかトマトジュース。とりあえず赤いもの。
…そんな生活を送ってきた翼は、健康診断の結果により即刻入院となった。
「血は飲みません!」
翼が頑なに血を飲むことを拒み暴れたので、麻酔で眠らせた上で血液の点滴が行われた。
三日後には吸血カウンセリングが行われ、翼はカウンセラーと何度も対話を行った。点滴で栄養状態は良いはずなのに翼の顔が日に日にげっそりしていったのは、カウンセラーに笑顔で吸血の素晴らしさを何時間も説かれたからだった。言い方を変えてはいるが、要は「吸血は罪ではない」ということを一万回くらい言われた。
そして翼は入院から二週間後にようやく解放され、ヘロヘロになりながらも帰宅したのだった。
「翼、入院してたんだって?大丈夫?」
アオが心配そうに言う。今回の入院は翼の家族以外のお見舞いが禁止されていた。個人の心のセンシティブな問題による入院だったから、らしい。
「いや。全然、大丈夫じゃない」
翼は喚いた。
「あろうことか俺は人間の血を点滴で取り入れてしまったんだ。吸血鬼に捕まって血を抜き取られた、憐れな人間たちの血を」
「でも翼、明日から俺と一緒に
「うん…」
若い吸血鬼は異文化の勉強のため、一定期間人間界に降りて人間と共に学校に通うことがある。人間で言う留学のようなものだ。
その辺の人間を捕まえて新鮮な生き血を飲んだり、魔界にはない人間界の娯楽を楽しんだりと、吸血鬼たちはこの期間にやりたい放題できる。そのため人間界への留学は吸血鬼なら誰もが羨むものなのだが…
「行ぎだぐな゙い゙」
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作者名:ぺぺこ | 作成日時:2019年8月21日 4時