検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:18,325 hit

  ページ7

そこでAはふと、自分が妥協すべきなのだろうかと考えた。
(俺が三島に会うのをやめればいいんだろうか。それか、ばれないようにこっそり会うとか…)
「それこそ、最低じゃないか」

途方にくれたままリビングに下りて行くと、テレビがつけっぱなしになっていた。
Aはそれを消そうとしてリモコンに手を伸ばしかけて、動きを止めた。
『本日は、ステラガーデンを紹介したいと思います。こちら、カフェが隣接していて───』
テレビの中の女性キャスターが、何やら人気スポットを紹介していた。
(───あ)
その時、Aに鮮烈なイメージが湧いた。
テレビの中に広がる美しい庭には、色とりどりの花が咲き乱れていた。
それを背景にして立つ、笑顔の梅野。
(描きたい)
Aはぐっと拳を握った。久々に込み上げてきた気持ちだった。
(梅野とここに行きたい、描きたい。きっと、よく似合う)
一度そう思ってしまうと、Aはもう自分を止められなかった。携帯を手にとると、すぐに梅野に電話をかけた。
『──もしもし』
十日ぶりに聞く梅野の声だった。
「もしもし、梅野?」
『…なに?』
「明日、デートしよう」
『………』
しばらく間が空いた。空いて、
『はぁあ?』
梅野の気の抜けた声が返ってきた。
『ちょっと、待って…』
梅野は困惑したように聞いてきた。
『僕ら、ケンカしたよね?』
「したな」
『十日も口をきいていないはずなんだけれど』
「そうだな」
『どうしていきなり、そんな話になってるの』
「梅野を絶対に連れて行きたい場所があるんだが」
梅野が怒ったように言った。
『ねえ、僕の話聞いてないよね』
「うん。ごめん。聞いてない」
『なっ…』
続けて梅野が何か言う前に、Aは遮った。
「あのさ、俺、十日間ずっと梅野のことを考えていたんだ。けど…結局なんで梅野が怒ったのかよくわからなかった。でも、やっぱり会いたいんだ。会わないと、わかることもわかんないだろ。これでも俺は、梅野の全部を知りたいし、自分のものにしたいと思ってるんだ」
『ぜ、全部?……な、なにそれ…』
照れて梅野が黙った隙に、Aは畳み掛けた。
「それに、正直限界だ。もう十日もキスしてない。それから…」
『うわあああ!!待って!!もうそれ以上言わなくていいから!』
「うん。じゃあ明日、十時に御園駅で」
『………馬鹿』
「知ってる」
『ぜったい行かないし』
「うん。じゃあ、また明日な」

 →← 



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.8/10 (28 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
76人がお気に入り
設定タグ:オリジナル , BL , 男主 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

すらいみーる@元もちづき(プロフ) - 以前からぺぺこさんの作品を読ませて頂いているのですが、すごくおもしろくて更新とても楽しみにしてます!!!これからもぺぺこさんの一ファンとして応援してます! (2018年9月11日 23時) (レス) id: 3b52443fef (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぺぺこ | 作成日時:2018年4月14日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。