検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:18,328 hit

雪の精の苦難 ページ2

(どうしよう)
どうしてあんなことをしてしまったのかと、梅野は頭を抱えた。
梅野は去り際に、Aにキスをしたのだ。
(なんであんなことしちゃったんだろう。せっかくAが連絡してくれると言ったのに、もう、とても話せない…)


朝、急な転校を親に知らされて、梅野は放課後慌てて美術室へと走っていた。
(喧嘩したことなど、気にしている時じゃない。Aに会いに行って、転校のことを伝えなくちゃ)
両親は、引っ越しのことはぎりぎりにしか話してくれなかった。たぶん、自分の子供に関心がないのだろうと思う。
梅野が息を切らして美術室の戸を開けると、数人の美術部員と三島がいた。
しかし、そこにAの姿はなかった。
目をまるくした三島が歩み寄ってきて、梅野に「どうしたの」とたずねてきた。
梅野は息をととのえてから言った。
「Aは来ている?」
三島は軽く眉を寄せて言った。
「ああ、あいつ今日は来てない。サボりかしら。…その様子だと、何か用事があるんでしょう」
梅野はそれを聞いて、自分の意志が急速にしぼんでいくのがわかった。
「話があったんだけれど…」
「じゃあ、私がAをここに来させようか?明日にでも」
なんだか急にAと会うことに弱気になってしまった梅野は、首を振った。
「ありがとう。……でも、もういいんだ。伝言だけ、頼んでもいいかな」
梅野が転校の旨を交えて三島に伝言を伝えると、彼女はとても驚いた。それから、気遣わしげに言った。
「あの、余計なおせっかいだとはわかっているのだけれど、言わせて。二人が喧嘩したことをAから聞いたの。明日にでも会って、仲直りすべきだと思う」
梅野は少し黙ったあと、俯いて悲しげに笑った。
「僕、今日は勢いだけでここに来られたけれど……また明日も来られるって気がしないんだ。なんだか、今さら、顔を合わせる勇気を無くしちゃったみたいだ…」
三島は何か言いかけたが、はっとしたように口を押さえて黙った。そしてその数秒後、梅野に言った。
「伝言はたしかにうけとったわ。明日、必ず伝える」
「ありがとう」
梅野は弱々しく笑い、美術室を後にした。


翌日、梅野は美術室に行かなかった。
(…遅いな)
放課後の教室で、梅野は父親の迎えを待っていた。
(今日は迎えにいくから、バスに乗らずに待っていろと言っていたのに。まだ来ない…)
窓から外を見ても、父親の車がやってくる気配はいっこうに無い。

 →←キス



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.8/10 (28 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
76人がお気に入り
設定タグ:オリジナル , BL , 男主 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

すらいみーる@元もちづき(プロフ) - 以前からぺぺこさんの作品を読ませて頂いているのですが、すごくおもしろくて更新とても楽しみにしてます!!!これからもぺぺこさんの一ファンとして応援してます! (2018年9月11日 23時) (レス) id: 3b52443fef (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぺぺこ | 作成日時:2018年4月14日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。