玖 ページ10
「…あの…？聞いて、ますか？」
「？…ああ、はい」
ふっ、と意識が現実に戻って来る。
目の前に女の子が立っている。
「あ…改めまして、百夜A君！えと…あの時、吸血鬼から助けてくれて…ありがとうございました。す、好きです！！読んでください！！」
ずいっ、と手紙が差し出される。
ああ…そういえば、昨日吸血鬼が出たんだっけ。
興味がなさすぎて忘れてた。
「すみません。僕、付き合うとかって興味がなくて。では」
「えっ、ちょっ…」
「やーやー、さすが吸血鬼から学校を救った英雄さん！モテモテですね〜」
シノアさんが影から歩いてきた。
「でも少し酷くないですか？まぁ仕方ないですか、童貞ですしね」
「…童貞って、いけないんですか」
「はい、童貞は悪ですよ。何せ、我ら日本帝鬼軍はカップル成立を日々奨励してるんですから！」
そうだったんだ…。
「世界は一度滅びました…。それは未知のウイルスのせいで、突如大地に溢れ出したバケモノたちのせいで」
へらへらと笑いながらシノアさんは話す。
「もう人口は激減です！あの壁の向こうは、バケモノで溢れる廃墟と荒野…。この世界は、もはや人間には優しくない」
人間には優しくない…。それもきっと、人間のせいなのに。
「ですが、我ら日本帝鬼軍は残った人間を取りまとめ…増殖させてっ、世界の覇権を狙う！」
「…えっと…？」
シノアさん、目がきらきらしてる…。
「さあ、産むのです…増えるのです！我ら日本帝鬼軍のために！
ビバ！不純い…」
「もう良いです…」
楽しそうに言うようなことかなぁ？
「まあでも、童貞は悪なんじゃないですか？」
「…！そ、それって…童貞だと、日本帝鬼軍には入れないってことですか…？」
「違いますよ、ご安心を」
良かった…。
「…そういえば、僕は先日の戦いで認められたのでは…？なぜまだ高校に？」
「やー、その辺の文句は中佐にどうぞ♪」
グレン…。
「でもグレン、どこ探しても全然いないです…」
「中佐のことを私に言われましてもねぇ…。それに、殲滅部隊の訓練ならもう始まってるんですよ」
始まっている…？
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