捌 ページ9
「っふ…ひぐっ…うあああああああああ！！」
長い暗闇の道。
ただただ号哭しながら走っていた。
兄様。兄様、兄様…。
まだ言えてないこと、たくさんあったのになぁ。
人間の世界に行けた時の夢とか、いっぱい話したいこと、あったのに。
…皆と一緒に食べれる夕ご飯が、あれで最後になるなんて。
ちゃんと食べておけば良かった。
ちゃんと話しておけば良かった。
ああ、僕はなんて使えない人間なんだろう。あの時、兄様より早く飛び出していれば、兄様はまだ生きていた？
前方に、光が見えてきた。
…あそこに入ったら、もう戻れない。
でも、それでも。
僕は皆の仇を討つ。
光に飛び込んだ。
目を開く。
「…は…？な…これ、」
あんまりにも美しくて、予想していた世界とは違って。
「……お、大人は、みんな…死んじゃったん、じゃ…？」
大人は生きていて。
本でしか見たことのないような「列車」や「ビル」なんかがたくさんあって。
「世界は、滅びたんじゃ…。にい、さま…」
全部、吸血鬼たちの嘘だった…？
なんで、なんのために兄様たちは…。
ぼーっとしていると、後ろから男性の声が聞こえてきた。
「よし、いたぞ。『預言』通りだ。
日本を壊滅させた百夜実験場の非検体の一人が現れた。
少年、吸血鬼退治のためにお前を利用させてもらうぞ」
黒い髪。
笑う口元。
この人…吸血鬼のことを知っている…。
「…兄様たちの仇を討つためだったら…僕のこと、利用してください…！」
吸血鬼どもを滅ぼせるなら。
兄様たちの無念を晴らせるのなら。
この命。
この体。
喜んで差し出そう。
ここから、
世界の滅亡と
吸血鬼、天使、悪魔と。
僕の戦いが、始まった。
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