伍 ページ6
二つの世界を繋ぐ門。
状況が良く分からないままついて来てしまった。
「…っと緊張してみたはいいけどよ…あっさり門に着いちゃったぞ?マジでここ出口なのか?」
優兄様が僕の手を握りながら言う。
「うん…地図によるとそうなるね。てかまあ、吸血鬼も人間が逃げるなんて思ってなかったんだろーねぇ。外はウイルスだらけだ、って言うし」
ミカ兄様が笑った。
「でも近すぎだろ」
「家畜小屋は隙間だらけなのに、家畜が逃げないのと同じ。…馬鹿にされてたんだ」
「でも俺らは逃げる。な、A!」
「…逃げる…」
信じられない。
もう血を取られることも、残飯みたいな粗末なご飯を食べることもない。
自由、なんだ。
…ここにいる、僕の家族は皆。
吸血鬼に「飼われる」ことなく、生きていけるんだ。
…本当に?
「家畜じゃないからねぇ。なんせ僕、天才なんで」
「僕も天才!」
「僕も!」
ミカ兄様の言葉に、弟たちが声をあげて笑う。
「あはは、じゃあ百夜孤児院の僕らはみーんな天才ってことで!カッコ優ちゃん除く、カッコ閉じ」
「カッコ閉じじゃねぇよっ!」
何かがおかしい。
こんなに上手く行くものなのかな。
吸血鬼は人間より五感が鋭い、とどこかで読んだ記憶がある。
皆が決して小さいとは言えない声で話しているのに、なぜ誰も来ないんだ。
僕のそんな考えを置いて、皆は扉に駆け寄っていく。
上からカツン、と音が聞こえた。
「あはぁ〜…待ってたよ?哀れな子羊君たち」
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