肆 ページ5
誰の目もつかないところで泣いて、気がついたら眠っていたみたいだ。
ふらつく足で立ち上がり、部屋に向かう。
もう皆は居て、でもミカ兄様は見当たらなかった。
…フェリド、だっけ。あの吸血鬼のとこにいるのかな。
…血を取られて、痛い思いしてるのかな。
思わず両手を握りしめる。
「今日、カレーだって!」
「あ?カレー?」
「なんかね、ミカが裏のルートってやつで見つけて来てくれたらしくて」
そんな会話が耳に入る。
気持ちが悪い。
お腹も空かないし、アカネ姉様に一言かけて先に布団に入った。
布団…と呼ぶには、少し粗末なんだろうけど。
目を閉じる。
寝るのは好きだ。
何も考えなくて良い。
何も感じなくて良い。
ふわふわと柔らかな世界に浮かんでいられる。
ただ、優しい夢に囚われたままでいられる。
かちゃ、と扉が開く音が聞こえた。
ミカ兄様が帰ってきたのだろうか。
本当はお出迎えした方が良いんだろうけど、でも起き上がる気力がない。
「A、起きて」
「…んー…ミカ兄様…寝かせてください…」
手を振り払って布団にくるまるが、その布団を引っ剥がされた。
「逃げよう、人間の世界に…!」
「…え」
ミカ兄様の手には、巻物、に見える紙。
優兄様は銃を片手に持っている。
「ほら、早く!」
短いナイフを手に握らされた。
「ミカ、兄様…これ…」
「フェリドの館から色々パクって来ちゃいました!逃げるよ、皆で」
手を握られた。
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