拾伍 ページ16
呪符がたくさん貼られた扉をグレンが開く。そこには大量の、鬼の像があった。
「…グレン、ここは」
「お前が一番欲しがっていた、最上位の鬼神を封入した武器の部屋だ」
つまり、これがあれば。
「…これを手に入れれば、吸血鬼を狩れる」
「そりゃ、お前の実力次第だけどな」
…兄様たちの、仇をとらなくちゃ。
「ここにあるのは希少である『黒鬼』シリーズだ。もういいだろ、始めようぜ。俺も暇じゃねーんだよ」
…ウソつけ。いつも暇なくせに。
「好きな武器を選んで、儀式陣に入れ。その武器に触れたら自動で契約の儀が始まるからよ。お前らが鬼に負けなけりゃ、とんでもねぇ力が手に入る。まぁ負けたら人食いの鬼になるか、鬼の力に潰されるかだな。ちなみに、鬼になったら俺が殺す」
…これを手に入れれば、やっと僕の願いが叶うのか。
「くふ、…この時を待ってました」
二刀流タイプの武器の儀式陣に足を踏み入れる。
「与一、君月、負けたら許しませんから」
「…お前こそ」
「がんばろうね、Aくん!」
刀に手をかけ、勢いよく引き抜く。
「さぁ、…力を頂戴、鬼」
…意識が飛んだ、と思った瞬間、僕は真っ白な空間に立っていた。
急にあの日の出来事が蘇ってくる。
腐った世界から逃げようとして、家族を吸血鬼に殺されたあの日。大切な家族の死体が、僕の足元に転がっている。
「見ろよミカ。Aだ。俺らを見捨てて逃げたAだ」
「本当だね、優ちゃん。裏切り者のAだ」
後ろから聞こえた愛おしい声に振り向くと、記憶の中の姿のままで兄様たちが立っていた。
…すっかり、僕の方が背が高いや。
「あれ…君の弱いとこに触れているつもりなんだけどなぁ、全然動揺しないね。流石だ」
「…ねぇ、どうでも良いから力をくれない?」
そう呟いた瞬間、黒い物体が僕を貫く。
ぁあ、…兄様もこれくらい痛かった?
もっとだよね、きっと。
「…何故、君はそんなに力を求める?復讐のため?それとも、大切な人を守るため?」
「…どうでも良いでしょ」
「…ふふ、いいよ。…力を貸そう。僕は強い子が好きだ、強い欲望が好きなんだ。復讐のために力が欲しいんなら、僕は君に無限に力をやれる。でも…、まだ足りない。もっと、もーっと復讐のために生きてくれないと、力はやれない」
地面に倒れた家族の口から、次々と聞きたくない言葉が紡ぎ出される。
「だから、…愛を捨てて」
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