拾壱 ページ12
あれから何日か経った気がする。
興味がなくて全部忘れちゃった。
でも、今日は月鬼ノ組に入るための研修教室に行く日。覚えておかないと。
両隣を与一とシノアさんに挟まれて、教室に向かって歩く。
吸血鬼事件の時に少し話しただけで、僕は話した内容すら覚えていない与一。
でも、なぜか凄く懐かれてる…。なんでだろう？
「与一、大丈夫…？少し顔色が悪い気がします…」
「だ、大丈夫！ちょっと緊張してるだけ…」
緊張？どうしてだろう。
「Aくん…。あのね、月鬼ノ組って、軍の中でもずば抜けた才能がある人だけが入れるんだって。僕ら途中転入するわけだし…嫌われたりしたらどうしよう…」
「嫌われても月鬼ノ組に入れれば別に良いと思いますけれど…」
「Aくんは、強いんだね…」
気弱な与一が、少し可哀想だった。
「でも、もし与一が皆から虐められたりしたら僕が守りますから」
大丈夫だよ、と言うように少し背伸びして頭を撫でてあげた。
「さっさと終わらせて、吸血鬼を殺しましょう…」
「うん！」
ガラ、とシノアさんが躊躇なく教室の戸を開ける。
「失礼しまーす。連れてきましたよ、グレン中佐」
グレンがこっちを向く。
「よし。お前ら、良く聞け。今日珍しく担任である俺が出向いてやったのは、転入生がいるからだ！」
え…担任は、毎日教室にいるものじゃ…。
「とりあえずこいつらだ。百夜 Aに早乙女 与一。一言で言うと…、雑面と弱虫だな。今日からこの教室の一員になることになった」
「僕は確かに、雑面ですけど…与一は…」
「よ、弱虫…弱虫……」
泣きそう…大丈夫かな？
「いいから自己紹介しろ」
「…はぁ」
思わずため息が出た。
「…百夜 A。13。与一を虐めたら殺します…、以上です。帰ります」
さっき入ったばかりの教室の戸を出て、馬鹿長い廊下に足を踏み出した。
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