【銀魂】己の行く道 貴方の隣で【土方十四郎】

真っ直ぐに ページ47

青空に薄く溶けていきそうな月と一緒にまだ東側に浮かんでいる太陽が、夏のそれよりもまだ柔らかで繊細な光で、江戸の街を。私達が歩いていく先を照らしている。手を繋いで歩いている私達のことも、同じように、平等に。そんな光に目を細めていれば、誰かが。ずっと昔に聞いたことのある優しい、日溜まりのような声が、「君はもう、大丈夫」と囁いたような気がした。その光が、そっと頭を撫でたような気がした。いつかの温度を纏って。きっと気のせいなのだろうけれど、なんとなく、意味もなく、心の中で頷いては、ありがとうと呟いた。風がふいて、前髪がふわりと揺れた。


『自分が信じる道を歩いていれば、強くあれる』。

私は今、自分が信じた道を歩いている。自分の意思で決めた道を、共にありたいと願った人達と一緒に、自分の足で。

傷付いて傷付いて、泣いて泣いて泣きじゃくって、それでもまだ涸れない涙を瞼の裏に隠しながら笑って、痛みを抱えて、それを無視して。自分の弱さに見ないふりをして。そんなものはもうないのだと、捨て去ったのだと嘯いて。そうやって辿り着いた場所で出会えた大切な人と。仲間たちと。


…隣に、大切な人がいる。私の右手をしっかりと握って、迷ってしまわないように、転んでしまわないように。しっかりと繋いで、同じ速度で歩いている。一人で歩くときよりその道は狭く感じられて、それがなんだか幸せで、手の中にある温度が、一人じゃないと証明してくれているようなその暖かさが、愛しくて。

…この気持ちを。二度となくしてはならないのだと。忘れようとしてはいけないのだと。そう思う。

それを決意するように、きゅっと、土方さんの手のひらを、私は握り返すのだ。


「…おら、ついたぞ。満足したか」

「しないです、延長を希望します」

「…あのなァ…」

「冗談ですよ。ありがとうございました」


ちょっとだけ名残惜しく感じながらも、その手を離して。笑って見せる。その温度の余韻ですら、私の顔は綻んでしまう。純粋に、単純に、「幸せだなぁ」と思って、思ったままを口に出してみたら、「…良かったな」と耳をほんのり赤くした土方さんが歩き出した。私はその隣に並んでは、幸せを隠すことなく口角を全力で上げていた。


ニタニタするなと言われて、むふふふと声を漏らせば、不審者かと言われて。失礼だと頬を膨らませて怒ったら、笑われてしまった。


そんな下らない言葉を交わしながら。笑い合いながら、私達は同じ道を、真っ直ぐに歩いていく。

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