【銀魂】己の行く道 貴方の隣で【土方十四郎】

数時間前のこと ページ22

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…遡ること数時間前。私は一日、というよりは一晩入院させられていたところを退院して、それからさぁ屯所に帰ろうと土方さんを含む私以外の隊士達が帰路を辿ろうとしていた時に、私は彼等とは別行動を取ることにした。その時の私の頭は鏡を見ることなく刀で乱雑に髪を斬ってしまったため、なんともへんてこりんな髪型をしていた。そのことについて、幼馴染達以外の皆はからかったり馬鹿にしたりはしてこなかったのだけれど、私自身はとても気にしていた。端くれとはいえ私だって女である。身なりを気にするのは当然のことだ。それに、今日の夜は土方さんとの約束がある。あの場でもこの髪型で居るわけにもいかないだろう。私が嫌だ。好きな人の前で、おかしな格好はしていたくはない。髪型をどうにかする必要があった。

土方さんは心配して、ついていこうかと申し出てくれたのだけれど、土方さんも傷は痛むだろうし、あまり無理はさせたくない。それに、きっちりと綺麗に整えた髪を見てビックリさせてやろうと思っていた。ずっと長い髪を保ってきたけれど、私は短い髪も絶対に似合う。自信を持って言える。そんなわけで、『大丈夫です』と告げて、私は一人、久々の江戸の街へと繰り出したのである。


まず美容室に行って、髪の毛のカットをした。予約なんてしてなかったから結構待たされるかと思ったのだけれど、案外客が少なくてすんなり私の番が回ってきた。店員さんは私の髪をみてやはりギョッとしていた。無理もない。毛先の長さがバラバラだ。どうしてこんなことになるのか、分からないだろう。まさか自分に向けられた刀を素手で掴んで自分で斬ったとは想像もできまい。

困惑気味の店員さんには、『失恋してついバッサリとやっちゃったんですけど後悔して来ました』と嘘ではないけれどなんか違うことを適当に言っておいた。店員さんは曖昧に笑ってからカットに取り掛かってくれたけれど、会話は少なかった。


そうしてカットやら何やらが終わり、お会計を済ませてから美容室を出ていった。きっと私が居なくなった後のそこでは、なんだったのだろう的なことが話題となっただろう。次に美容室に来るときは違うお店に行こうと思う。


…髪の毛もサラサラになったし、綺麗に整ったし、帰ろうか、と。思っていたのだけれど、私は行かなければならない場所があったのだ。昨日の今日だし、色々落ち着いてからの方がいいかとも思ったのだけれど、けれどなんだかそれも違うような気がして、屯所に帰ろうとしていた足を逆方向に向けたのだ。

漂流したくはない→←私だけなら

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