原動力は ページ39
…きっと、これから先も、色んなことがあるだろう。今こうして、もしかしたら世界で一番幸せな空間かもしれないこの場所に居る私には想像もできないくらいの出来事があるのだろう。歩いていれば雨が降ってくることもある。小さな石ころに足を取られて躓いて転んでしまうこともある。すりむいた膝が痛んで歩けなくなって、泣き出してしまうようなこともあるだろう。きっと、あるのだと思う。ない方がおかしい。だって、歩いているなら。そんなことがあって当然のことじゃないか。動いているのだから。一歩一歩踏み出すたびに、リスクを冒しながらそれでも歩いているのだから。それを恐れて止まってしまうのはつまらないし、逆に歩いていても石ころさえない道のりは何も面白くない。
けれど、その一歩を踏み出すのには、とてつもない勇気が要るものだということを、私は知っている。だって石ころに躓きに行っているようなものじゃないか。誰もがそんなものはどうだっていいことなんだと割りきってしまえるほど強くはないし、私もその一人だ。痛いのも、傷付くのも、怖い。足を止めたくなることだって、幾らでもあるだろう。
けれど、と、私は思う。それは確信だった。そうなのだと、そうなれるのだと、確信していた。
「貴方が居てくれるなら、私は強くあれる。怖くても、歩き続けていられる」
だって、隣に土方さんが居るのだから。怖いものなんて何もない。転んだって、泣いたって、彼は名前を呼んでくれて、手を差し伸べてくれて、涙を拭ってくれるから。その声や温度で、クリアになった視界で、また前を向ける。
「例えどんな道を歩くことになろうと、貴方が居るなら大丈夫だって思えるんです」
…坂道だろうと蕀道だろうと、恐れても怖くても足を止めても、それでも前へと進める。
だって、その原動力は。
「私は、……貴方と同じ道を歩んでいきたい」
…誰より大切で、誰より愛しい彼の隣に居たい。彼の隣を歩いていきたい。その思いだけで、私の足は動く力を得られる。
「私は、貴方のことが好きです」
彼の瞳に囁きかけるように、私は彼の目を見つめてはまたそう口にした。土方さんはタバコそっちのけで私のことをひたすらに見据えており、目を小さく見開いていた。何を考えているのか分からないけれど、ただただ、その瞳に映った光が、綺麗だった。
「……本当に、」
「…ん？」
「…本当に、いいのか」
何かに怯えているみたいに、彼は問い掛ける。あまりにも彼らしくなくて、私はついクスリと笑ってしまってから、やれやれと肩を竦めて。
そうして、手を伸ばした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 619人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です！銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (
レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます！こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください！！ (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです！楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん！ありがとうございます…！！最後まで読んでくださり感謝です…！！高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…！！高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです！晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです！ (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ピピコ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時：2018年6月14日 19時
