帰ってきた ページ12
Aside
『A!!どうしたんじゃその髪は!!失恋でもしたのか!?』
『バッカ!!辰馬お前!!お前マジで黙ってろよ!!ホンットにデリカシーの欠片もねェのな!!何処に落としてきたんだよ交番行ってこい!!』
『あははは、前にも言ったじゃろう金時。わしのデリカシーはへその緒と一緒に切り落としてきたんぜよ』
『そーだったな!!そして俺は金時じゃねーって前にも言ったよな!!』
『A、お前という奴は。門限は6時だといつも言っているだろう。何時だと思っているんだ、その上一週間も姿を眩まして…』
『だぁぁぁぁぁアンタら一旦黙ってくれる!?』
…鬼兵隊の戦艦から漸く出てきた私は、土方さんとの感動的とも言えたであろう再会を果たし、それから私に会うためにここまで来てくれた、ボロボロになってまで戦ってくれた幼馴染みや旧友達の元に駆け寄ったのだけれど、…まぁ、冒頭の通り、アイツらはいつもと変わらずあんな調子であった。辰馬は何とも無神経なことを言うし、銀時はやかましいし、小太郎は何故か説教を垂れてきた。何故私が叱られなければならないのだろう。人差し指を立てながらにどうのこうのどうたらこうたらと言葉を並べていくソイツの指を曲がってはいけない方向にへし折りたい衝動に駈られたけれど、奴も奴で傷だらけになってまで私に会いに来てくれたのだと考えるとそれは躊躇われた。
…銀時も、恐らくは変装なのだろう海賊のコスプレをした小太郎と辰馬も、身体中に傷を負っていて赤黒いしみをいくつも作っていて、それを目にしては胸が痛んだし、苦しくなったし、たくさん謝りたかったのだけれど、三人は私の心境を、もしかしたら察していたのかもしれない。ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てて、私のそんな感傷的な気持ちを不躾とも言える感じで拭い取ってくれた。
…きっと、三人とも色々思ったことがあっただろう。とんでもない心配をかけたのだろう。やかましく騒いでいるソイツらの表情に、疲労に混じって確かに安堵の色が滲んでいたのを、私は見つけていた。だから、やいのやいのと小競り合いをしたのちに、私は囁いた。それは、一番に伝えるべきシンプルな言葉だった。
『ありがとうね、皆』
…そう言うと、三人はふざけきった顔から、不意に優しげな微笑みを浮かべて、ひとつ頷いてくれた。そして。
『…おかえり』
そんな言葉を返してくれた。銀時は乱暴に私の頭を撫でて、辰馬は無遠慮な声量で笑って、小太郎はその声に眉を寄せていた。
日常に帰ってきた。そう思った。
619人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です!銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます!こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください!! (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです!楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん!ありがとうございます…!!最後まで読んでくださり感謝です…!!高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…!!高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです!晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです! (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年6月14日 19時