#16 浴衣。 ページ16
むさ苦しい男達しかいない男湯の楽しみは特になく、大きいお風呂とサウナを少しだけ楽しんで長居することなくすぐに出た。
とりあえずいつも以上に身体は丁寧に洗っておいたけど。
はぁ...今日こそ、俺は1歩踏み出せるだろうか。
売店に売っていたコーヒー牛乳を買って、ベンチに座ってAちゃんが出てくるのを待つ。
こういうとき、いつもなら普通にスマホをいじるけど今日は歩いてる人をじーっと眺めてみる。
大学生のサークルとかの旅行とか、家族連れが多いと思いきや、カップルもたくさん。
イチャイチャしてて楽しそう。
このあとはいい夜を過ごすんだな。羨ましい。
って、俺もこれからいい夜を過ごすんだ。
そうだ、まだ終わってない。
「おにーちゃん!」
「ん?俺?」
「わんちゃん買ってもらったのー」
ぼーっとしていた俺にトコトコと駆け寄ってきたのは小さい女の子。
手に持っていたのはお土産屋さんとかによくあるどこにでも売ってそうな犬のぬいぐるみ。
「よかったね」
「おばーちゃんがくれたの!」
「へぇーかわいいな」
犬の頭をぽんぽんと撫でてやると嬉しそうににこーっと笑って「でしょー?」って自分でもよしよししてる。
「ちょっと!ゆーちゃん!どこ行ってたの?!」
女の子のところに走り寄ってきたお母さんが俺の方を見て「すみません...」ってペコペコしてる。
「いえいえ」ってこっちもつられてペコペコしてると、「バイバー!」って小さい手で一生懸命手を振ってる女の子。
手を振り返して、女の子を見送ると思わずにやける。
まだまだ世界は平和だな。
「おにーちゃん!」
「...って、Aちゃん、なにそれ?」
「としくんと子どもの組み合わせにキュンキュンしてました...」
「え?!見てたん?!」
「としくんかわいかった...」
目の前に現れた彼女の浴衣姿に一瞬気を取られて、違和感すぎる「おにーちゃん」をスルーするすところだった。
「どうかな?これで着方あってる?」
「ん、あってるあってる。あと...似合っとる」
ちょっと恥ずかしくなって、手で口を塞ぐとAちゃんも「としくんも!」って目をキラキラさせる。
手を繋いで歩いてるときも、いつも以上にチラチラと胸元を見てしまう。
浴衣最高やんけ。
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作者名:Ma | 作成日時:2018年9月12日 12時