ドストエフスキー ラストリゾート ページ9
捏造あります。報われません。多分。
クシャクシャの頭で考える。
貴方のように上手くできないけど。
十四時過ぎに起きたとき、家の中には誰一人いなかった。親も、姉も。平日の午後だ。いる方がおかしい。
不登校になって三年。
一日一日が憂鬱で。やってきた今日に舌打ちをして起き上がる。そんな日々も今日で終わりだ。
今日が私の最終演目だから。
四二度台の高熱。溜息をつき、外を見る。何処かで火事があったのか煙が上がっていた。
「リンス切れてるから買っといて。どうせ暇でしょ」
「洗濯回しといて。暇でしょ」
親と姉から来たLINEを既読スルーする。どうせ死ぬんだ、まあいっか。
今の私は云うならば狭くなったベランダ。ゴミ溜め。
そんな私にあの方は云った。
「最後に僕に力を貸してくれませんか?」
貴方の為ならば何処までだって。いや、此処までだね。
貴方が欲しいのはこの異能。「罪と罰」。
この世界は私のような人にとっては生きにくくて。
逃げ場がなかった。
死ぬことに恐れは無い。昔はあったけど。もう無い。
そろそろ終わりにしよっか。
姉は愛されていた。いろんな人に。何時だったか、親が私ではなく姉の手を繋ぎ歩いていた時。姉はこちらを振り返り、笑った。かわいそうね、と憐れむような遠い目で。
貴方は私の異能を欲しがった。愛されているわけじゃないのに、必要とされたことが嬉しかった。必要なのは異能だけど。別に死ななくても譲渡出来るけど。この異能の真相を知っている人は少ない方が貴方のこれからの計画にとっては善いから。
貴方の為なら黄泉の国だろうが何処までも。いや、此処までだって分かってたよ。
行き場が無い私に声を掛けてくれたのは貴方だけだったから。
何でもするよ。
だって、見渡す限り私だけ置き去りみたいだから。
「散々な人生だったよ」
何回思っただろうか。こういうのを憂うというのだろうか。この高熱は毒によるもの。解剖されても不審な点が無いように。一人で死ななきゃいけない。
「許されるなら、もう一度やり直したい」
「助けて。誰か私を救って」
宛名のないそんな呟きは誰にも届かない。何にもない。
遺書を殴り連ね、死へ向かう。
これで良かったんだ。そう頭の中で何度も唱える。今頃私の異能は彼の下で役に立っているだろう。
「貴女が死んでも異能は生きています。僕の下で」
普通に幸せに生きる。そんな理想は掴めずに消えて行って。
あの時…。引き返すには遅すぎたみたい。
「貴女に安らかな眠りを。」
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作者名:神無月 | 作成日時:2023年1月16日 18時