First Sound Story 条野採菊 ページ12
「休憩にしましょう」
仕事をしていると、頭の中で聞こえる、貴方の声。別れて数年たった今でも私の心を揺さ振る。
記憶の中の貴方は何時も優しく微笑んでいる。
あの日、貴方と二人手を繋いで笑って帰った日々が思い出される。
あの頃は、ずっとこんな時が続くと思っていたのに。
貴方が最後に言った言葉「今までありがとうございました」がずっと鳴りやまない。
逢いたくて逢いたくて。声にならない声で貴方の名前を呼び続けている。
悲しくて、苦しいから。一人の夜が怖いから。夜空を見上げ貴方を探している。
私に別れを告げた後居なくなってしまったしまった貴方の跡を継ぎ、犯罪組織の幹部となり、光の世界とは反対をまっしぐらに進んでいった。
風の便りに、貴方が軍警になったらしいと聞いたとき、私はそっと左手の薬指に触れた。
貴方が呉れた指輪を今もしている。これが二人の最後の絆だから。光の世界に行ってしまった貴方と私はもう、相容れないから。
そう思って気付いた。遠い遠い、光の世界に行ってしまった貴方は指輪を付けてくれているのだろうか?
何時か、「好き」と伝えたかった。その気持ちはずっと、私の心の中に眠っている。
もう敵なんだよね。なら貴方は私を監視でもしているのかな?犯罪組織の幹部だから。
何処かで私を見張っているかもしれない貴方に届くように。
私はこの歌を歌う。
逢いたくて逢いたくて。声にならない声で、貴方の名前を呼び続ける。
貴方よりもこの仕事には向いていないみたい。人を一人始末する度、
悲しくて、苦しい。恨まれているからか、人肌恋しいからか、一人の夜が怖い。
だから、夜空を見上げて…
条野side
大切なAさんのことをずっと忘れない。
犯罪組織という暗闇の世界から、猟犬部隊という光の世界にきても。
移り変わっていく景色の中でも。
最後まで言えなかったこの言葉を送れるように。
「Aさんのことを愛していますから」
いつか迎えにいきますので。
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←オレンジ 森鷗外
12人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:神無月 | 作成日時:2023年1月16日 18時