溺れて染まる短編集【WT】 (ページ16)

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◎花束_sm ページ16

(両片思いシリーズ)

毎週水曜日に来てる人。私はあの人に、恋をしている。知ってるのは名前くらい。彼が私が働いている花屋に立ち寄るようになったのは3ヶ月くらい前のことで。恐る恐る話しかけられたのをよく覚えてる。

初めて彼___スマイルさんが買ったのはクジャクソウ。ちょっと季節外れの花だったから彼が買ったのはよく覚えていた。その時はただのお客様としか思っていたはずなのに。

次の週も彼は花を買いに来た。その時買ったのは確か…ペニチュアたっただろうか。可愛い花ばかり買うんだなぁ、なんて考えた。

その後もスマイルさんは毎週毎週休むことなくここに来て、いつの間にか好きになってしまった。初めてまともに話したのは彼が来て1ヶ月程だった頃だろうか。

「あの、人に花を送りたいんですけど…オススメってありますか。」

あまりにも声が小さくて聞き返そうか悩んだくらいだった。それでも彼の目があまりにも真剣で、私も真剣に選んだ。それで選んだのは白い胡蝶蘭。…さすがにピンクの胡蝶蘭を渡す気には、なれなくて。

そして今日も彼はやって来た。

『いらっしゃいませ。こんにちは、スマイルさん。』
「こんにちは。…。」
『スマイルさん？』

急に彼が黙るから、思わず話しかけた。彼はしばらく視線をさまよわせた後、私の目を見て口を開いた。

「あの、

赤い薔薇ってありますか。」

体が固まった。
全体の薔薇の花言葉は「愛・美」。しかし赤い薔薇となると花言葉は全て恋愛に関するものだ。…いや、気にしすぎてはいけない。まさかスマイルさんが花言葉を考えて買ってるなんて…思いたく、なかった。見え隠れする彼の想い人の影が脳裏を掠める。私はすぐに笑顔を貼り付けて、『少々お待ちください。』とだけ言った。…変では、なかっただろうか。

お店の奥で薔薇を探す。赤い薔薇を手に取ると、彼が一番最初に買ったクジャクソウが目に飛び込んできた。

…あれ？クジャクソウの花言葉って、

「Aさん。」

スマイルさんの声がする。鼓動が一気に早くなった。いや、期待なんてそんな、

「俺が今まで買った花、覚えてますか。」

今まで買った花全てをブーケにして持っているスマイルさんを見るまで、あと少し。

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クジャクソウ・・・一目惚れ
ペニチュア・・・あなたと一緒なら心がやすらぐ
白い胡蝶蘭・・・幸福が飛んでくる、純粋な愛
赤い薔薇・・・あなたを愛しています

お気に入りです。両片想い要素薄くてすみません…