憧れと恋は紙一重【夜久衛輔】

兄としてやるべき事 ページ31

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倉庫に芝山とAが入って行くのを視界に入れてモップ掛けが終わった事を把握する。リエーフが逃げそうなのをとっ捕まえてレシーブ練させる。対人レシーブでも綺麗に此方にレシーブ出来無いのは何とかさせないとな。音駒でレギュラーを張るなら当たり前に出来て貰わ無いと守りの音駒の名が廃る。

「 おいリエーフｩ！！腕だけで取ろうとすんじゃねぇって言ってんだろーが！」

「 ﾋｨｯ！黒尾さんちょっと落ち着いて下さい！」

「 お前に言われたかねーよｯ！」

何度言っても直らないリエーフに怒り寄りも呆れが勝ってしまう。少しすると芝山が真っ青な顔で此方に向かって走って来る。其れに吃驚して身構えると俺の腕を掴みｸﾞｲｸﾞｲ引っ張りながら訴えて来る。

「 黒尾さぁぁぁんｯ！Aさっ…マネ！がｧ！」

「 おいおい落ち着け何言ってるか分かんねーぞ 」

恐らくAに何かあったのだろう。また俺が見て無い処で無茶でもしたのか。そう思いながら芝山の肩をぽんっと撫で落ち着かせる。

「 リエーフお前逃げんなよ、ちょっと見て来るから待ってろ 」

「 に！逃げませんよ！」

練習が終わったかとでも思った様に片付けをしようとするリエーフに釘をさし、先程芝山と入って行った倉庫へ足を向ける。そういえばちょっと前から夜久も居無いなと体育館内を見渡す。扉に手を掛け顔を出して覗くと座り込むAの姿と前に屈んだ儘此方を向く夜久が居た。夜久の説明によるとやっぱり怪我をしていた。この後のリエーフの練習と芝山の事を夜久に任せながらAの様子を伺うと暗闇の中でも目が良い俺は、顔が赤く染まり、瞳が少し潤んでいるAの顔に目を見開かせた。

「 なんかあったろ夜久と 」

俺の言葉にﾋﾞｸｯと肩を震わせるのを見逃さず、下手な誤魔化しも俺には意味無い。この様子で考えられるのは夜久が此奴に何かしたか言ったかの2択ってとこだろう。Aが夜久に対して抱いてる感情にはずっと前から気付いてたけど、夜久がAに対してそういう感情を持ってるとは勘の良い俺でも思わなかった。今迄の情報だけで、だ。Aに聞いても絶対口を割らないし、自分でその感情に気付いて無いのだから意味も無いだろう。

「 ( ま、今は見守るべき…か… ) 」

Aを背中に乗せながら倉庫を出る。任せた事をちゃんとこなしてくれて居る夜久の背中を見て吐いた溜息は夜になって肌寒い空気の中に吸い込まれていった。




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