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惑う。 ページ7

「友野選手入りまーす。」

撮影場所であるリンクに入る時、付き添ってくれているスタッフさんが大きな声で言った。

あ、見たことあるこれ。俺は心の中で少しニヤついた。
こーゆー時は確か、、、

「よろしくおねがいします!」

、、、だよな?

他のスタッフさんが振り返って、よろしくお願いしまーす、と返してくれる。

彼女は。彼女は、ノートらしきものを覗き込んでいた顔を一瞬あげて、ニコッと笑った。

ああ、まあ、そうか。そうだよな、今日は。仕事用の、あらかじめ用意しておいた笑顔だった。

「思っきし関西なまりだねぇ。」

スタッフさんが笑っている。

「え、あ、はい。」

俺も笑い返す。

目は彼女のことを見ていた。ミコさんを。

ミコさんは観客用の席に座って、モニターを覗き込んでいる。
周りには沢山人が集まっていて、年上らしき人や男の人達も、時折彼女がモニターから顔を上げて何か言うのを、真剣に聞いている。

あの人、ほんまに凄いんやな。

「じゃあ友野君、リハーサルしようか。」

スタッフさんに声をかけられる。

「はい。あ、えと、ミコさ、、監督さんにご挨拶しなくていいんですかね、、?」

「あー、うん、いいかな今は。前に会ってるでしょ?」

「そう、、ですね。」

言われなくても分かる。今は、邪魔するなという意味だろう。

リハ始めまーす、という誰かの声で僕は氷に乗った。

ギュッ。丹念に気が集まる。身体がうずき出す。氷に乗った時の、いつもの反応だ。

「友野君には、ウエストサイドストーリーをやってもらうという話でしたが、要望した部分を踊って貰って、欲しいカット取れればいいはずだったんだけど、、、さっき監督が、全部踊ってもらって一通り撮ってから編集でいじりたいって言い出して。」

無意識にミコさんの方に視線を向ける。

「はい。全然大丈夫ですよ。」

「ありがとう。じゃあとりあえず、カメラテストをしましょう。友野君も練習がてらで。」

「おっけーです。」

いつの間にか、モニターの前に座っていたはずのミコさんが、スタッフに混じってこちらを見ていた。

ドキッ、とした。

それは、いつか見た笑顔とは別人のような顔つきだった。

力強い目。逃さない。絶対にいいものを撮る。誰にも邪魔させない。

その目は、少し勘違いすれば、自分が特別に欲されているような気分になるものだ。

今にも手を伸ばされて、触られでもするんやないかと。

終わり←赤いね。



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サクラ - はらさん» ご指摘ありがとうございます!!助かりました(>_<) (2018年5月25日 0時) (レス) id: ebff37a161 (このIDを非表示/違反報告)
はら - オリジナルフラグをちゃんと外して下さい (2018年5月24日 21時) (レス) id: 6df54d9be3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サクラ | 作成日時:2018年5月24日 21時

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