瑞兆は白花を咲かす【嘉明】

十七 ページ18

Aside


お腹いっぱい……食べてしまった！！


最後の最後までお会計を譲らなかった(というかいつの間にか払われていた)嘉明に奢ってもらって


くうう…情けない……嘉明、いつのまにか収入の面でも私より大人になっていたなんて


『ご馳走様でした！！』


店から出てきた嘉明に向かって手を合わせて拝み倒した


嘉明はハハハと笑っている


嘉明「そんな気にすんな。それに…久々にAと一緒に飯を食べたかったんだ」


嘉明の笑顔に先程までの食卓を思い返す


昔にあったなんてことない思い出だったり


自分の父や母の話


お互い、会わなくなってから何があったのか


本当に他愛のない話ばかりだったけど…


すごく楽しかった


その一つ一つを噛み締める(ご飯の味も…)


『私も、嘉明と久しぶりにゆっくり話せて楽しかったよ』


あまり自分の感情が表に出ない方だと自覚しているからこそ


この時の私は今の自分の表情が目の前の嘉明のように笑えているんだろうなと感じた


嘉明「…それならよかった！」


ーーーーー


その後は嘉明に案内されて宿へと入り


彼と別れて一人きりの空間で一息つく


ここでや〜っと慣れない化粧を落とすことが出来る


【綺麗になってたから分からなかったんだ】


今日の朝、翹英荘を発つ時に嘉明に言われた一言が脳裏をよぎる


綺麗なんて初めて言われた


あの時はあまり気に止めなかったけど…


『どうして今になって顔が熱くなる……？』


鏡を覗き込むとものの見事に林檎のような真っ赤な頬になっている


なんだか少し、化粧を落とすのがもったいなくなってきたような


『〜っああもう！今日の私変！忙しい！疲れた！』


ヤケになってそのまま勢いよく後ろ向きのままふかふかの寝台に倒れ込む


はぁ……落ち着く〜…………


布団の滑らかな肌触りがとても心地いい


それになんだか嗅いだことのないいい香りがする


なんだか眠くなってきた、かも…


『たくさん歩いたもんな……』


ここ数年で一番の運動だった、間違いなく


自分でも思った以上に疲れていた私はそのまま睡魔に身を委ねた

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