落花流水の情【放浪者】

diary.8 ページ10

Aside


キノコに襲われて転んだ私


もうダメだと思ったその瞬間に私の目の前に現れた救世主


その青年の格好がスメール人というよりは稲妻人寄りだったので


何故か勝手に親近感を持った


もうキノコ達はいないと告げて去ろうとする青年


私お礼も言ってないのに…！


『ままま待って！！』


そんなすぐに行ってしまうと思わなくて私は咄嗟に青年の腕を引っ張った


すると案の定青年は怪訝そうな顔を隠そうともせずにこちらを見てくる


放浪者「何？僕は暇じゃないんだ」


明らかに拒絶されている…、でも


助けてもらったからには！何もしないでお別れなんて嫌


私が納得できないというわがままだけど


『助けてくれたお礼！させてください…！』


放浪者「面倒だからいいよ」


私の手を払ってまたすぐに去って行こうとする彼の腕を性懲りも無くまた掴む


ここまで来たら逃さん…！


『お願い〜！じゃないと私ずっと貴方の後をついて行くからっ！』


放浪者「はぁ？馬鹿なの君？」


初対面の人に馬鹿とは？！と言ってやりたかったけど一応恩人だから、落ち着け私


『馬鹿でいいので！…あ、そうだ！この方角…貴方もシティに行くんでしょ？

お礼にご馳走させて欲しいの！ね？それで満足するからお願いっ』


何やってるんだろう私


放浪者「…………勝手にしなよ」


相手がこんな嫌がっているのに無理やり押し付けがましいことをしている


この時は私自身も気づいてなかったんだと思うけど


なんだか無性にこの青年を離しちゃいけない


そんな気がしていた


きっとそれは、彼から香るどこか懐かしい香りのせい


桜の花………


私、もうホームシックになったのかな？


『あっ、ま、待って〜！』


ぼんやりと考え事をしているとお構いなく無言でスタスタと歩き始める青年の後を


私は性懲りも無く必死に着いて行った

diary.9→←diary.7

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す