落花流水の情【放浪者】

diary.19 ページ21

Aside


………あたたかい


心がポカポカする


なんだろう、これ……？


空「じゃあよろしくね放浪者」


パイモン「間違えるなよ！」


放浪者「間違えるわけないだろ

くそ…なんで僕がこんなこと……」


…誰か、はなしてる？


ゆらゆらとゆりかごの様な心地良さに身を委ねる


なんだろう


ここは、本当に安心出来るというか…


私……


この温もりを知っているような……


……温もり？


『ん……？』


うっすらと目を開く


いつもの自分の目線よりも少し高くて


私は誰かに寄りかかって……


放浪者「………」


あれ、この青年は？


というか、私、おぶられてる……？


今自分が置かれている状況に困惑するもどうしたものか


えっと確か…、私鼻から血を出して…それで


何故こうなった？！


頭の中はパニック、だが


規則正しい歩幅で揺られる一定のリズムがとても心地いい


……寝たフリしちゃお


バレてないだろうと思い青年の肩に寄りかかったまま


私は再び瞼を閉じようと…


放浪者「起きてるなら自分で歩いてくれる？」


『ひゃあぁぁっ？！』


いきなり青年から声をかけられて思わず飛び上がる


バ、バレてた…っ


放浪者「っ人の耳元で大声を出さないでよね」


そ、そうは言われましても…


ああ心臓に悪い


『ご、ごめんなさい…！静かにする…』


静かにするから


もう少しこのままおぶさっていたいのが正直なところ


だけど私の目が覚めたことで青年はピタリと立ち止まった


放浪者「君の泊まる宿はもうすぐだ、降りて」


『え……』


もしかして、ここまで送ってくれたのか


本来ならすんなり降りてお礼を言う場面なのかもしれない


でも何故だろう


なんなんだろうこの気持ちは…っ


『…お、降りたくない』


放浪者「はぁ？」


出会ったばかりの、それにさっきまで言い合いをしていた相手に何を言っているのかって


私だってそう思った


でも、本当に何故だかわからないけど


この青年は


どんなわがままも聞いてくれそうな


そんな気がしてしまったのだ


『まだフラフラするから、このままがいい』


今更になって稲妻を離れた寂しさが込み上げてきたのかもしれない


そんな言い訳を心の中で思いながら


私は青年の肩を掴む手にギュッと力を込めた

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