お見合い相手がやって来た【忍たま】

【八】　とんかつ ページ8

「あーー！なんで言っちゃうんだよ兵助！」

「俺は言っても損はしないし」
「得もしないだろう！！」
「あ、本当だ」


はああ、とため息をつく三郎さんも大変麗しいです。
三郎さんは久々知君の肩に手を乗せつらつら何か喋っている。
尾浜君は私の肩に手を置いて何かを言っている。
不破君は三郎さんを止めていて竹谷君は尾浜君のおかずをさりげなく奪っていた。

……いいんですかそれ？

竹谷君は美味しそうにとんかつを頬張った。
美味しそうです。
君が幸せならば私は構いません。

それにしても尾浜君は本当に気付いてないんですか？




「Aさんのタイプは、この中で言うと誰？」

(き、気付いていない……)

ずっと私に何かを呟いていた。
私も彼の言葉に気づいてなかった。

『三郎さんってとこですかね』
「とこってなんだよ」

……私三郎さんとももっと喋りたいな。



『尾浜君』
「はい！なんですか？」

『……貴方のお盆をご覧ください』
「なんで？」

『よく見てください』
「本日ののメイン、サクッとジューシーとんかつがなんだっていうんです……あれ、一つない」


低い声でぽつりとそう言うと竹谷君の肩は跳ねた。


「八左ヱ門」


犯人が分かり叫ぼうとしたその瞬間、
誰かがそれに被せる様に怒鳴った。



「アンタたち、静かにしなさぁぁい！！！」



食堂で食事を作っていらっしゃったおばちゃんだった。
そう言えば三郎さんばかりでおばちゃんをよく見ていなかった。
挨拶もしないでなんて失礼なことをしたんだろう。



「あら、そちらの子は？」

視線が私に向けられる。
挨拶！第一印象大事！


『すみません、初めま』
「おばちゃーん！Aランチで！」

「はいよ！」

挨拶を言いかけていた時、桃色の服を着た子達が数人やって来た。
(挨拶……できなかった)


しゅんとしているとあの子たちの会話がよく耳に入って来る。

「てか、彗ってばせっかちなんだから〜」
「えへへ、だってお腹空いたんだもん」
「彗らしいけどねー」



『す、彗っっっ！？』



いち早く反応した私。
三郎さんは顔を真っ青にさせていた、が。

見つければ私の勝ちも同然よ。
自然と笑みがこぼれた。

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