お見合い相手がやって来た【忍たま】

【七】　ライバル ページ7

『え？何の話ですか？』

「だからね、三郎こいつ好きな子いるんだよ」
「馬鹿勘右衛門、あれは違うと言ってるだろ」


フリーズした。
正直言うとかなり動揺している。焦っている。戸惑っている。
これは予想外だったのだ。


「彼奴美人だよな」
「でも俺的にはAさんの方が絶対に可愛いと思うけど」
『……ありがとうございます照れます』
「え、超真顔ですけど……」


そんなところではない。
いつもならお世辞でもなんでも嬉しくて照れて言ってくれた子の背中叩いて十メートル先ぐらいまで飛ばしちゃうんだけど。

今は本当に焦っている。



私は一番最初に言い出した不破君の方をガシッと掴む。

『ふーわくん』
「ひい」

「ら、雷蔵」

弱々しく心配そうに不破君の名前を呼ぶ三郎さんも素敵……でも。



『その子の名前教えてください♡』



ライバル見つけ出すことの方が先だ。
優先順位を間違えるなー焦らず行けー(コーチ)。


「あー、でもそれはさ。向こうがどう思うかなーみたいな」
フォローを入れてくるように竹谷君が控えめに呟く。

しかし申し訳ありませんがそれは無視させていただきます。

『さぁ不破君！教えてください！名前は！？』

「すごい圧……言うべきか、言わないべきか……」
「雷蔵頑張れ！」
「いいなー俺もボディタッチされたいなー」



「ていうかAさん、それは誤解でだな、」

間に割り入って三郎さんが言ったが聞こえないも同然。

『不破君教えてください！』
「えぇぇ……」



なかなか教えてくれません。
でもそうですよね。初対面の人に好きな人を教えるなんてなんの得もないですもんね。




「くのたまの、“彗(すい)”って子」




口を割ってくれたのはなんと、

『くっ、くくくくちくん！？』
「二個多いな」
「いや三個だろ」

お姉さん感動しました！
嫌われてたかと思ってた！！

ずっと目も合わせてくれなかった久々知君が今！
私のためにその重い口を割ってくれて……！



ずいっと距離を縮めてまぁ一方的にだが仲良くなった感を醸し出す。

「あの、近いです」
『傷ついた……』

先ほどの尾浜くんとの絡みの完全再現。
もう少し人には優しく接しよう。



泣きマネをしているときちらっと手の隙間から久々知君を見ると、


久々知君の頬は少し赤かった。

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