お見合い相手がやって来た【忍たま】

【二十】　タオル ページ20

ばしゃばしゃと冷たい水を寝ぼけた顔にかける。
スッキリとして水にぬれた顔を拭こうと辺りを手で探りタオルを探す。

「あっ、しまった･･････顔拭くもん忘れた･･････」

仕方がないため袖で拭こうとした瞬間、視界に女性が見えた。

(あぁ幻覚が見えてるのか、それともまだこれは夢？)

女性関係もなにも無い八左ヱ門にとって視界に女性がはいるのは
くのたま以外めったになく夢か幻覚と判断してしまうのだ。


『よかったらこのタオル使いませんか？』

その声は昨日にも聞いた気がした。
そう言えば学園に昨日三郎のお見合い相手が来ていた気がする。

よく見るとすっと立ってるAさんがいる。

「Aさんかぁ」
『うん？どうぞ、このタオル。袖で拭いちゃうと寝巻が濡れちゃいますよ』

「ありがとう･･････」

有り難く手にあったタオルを受け取る。
ばふっと思いっきりタオルを顔に当てるとAさんが笑った。


『タオルは必要不可欠です』
「確かに･･････でもどうしてタオルがないって分かったんだ？」

『偶然見かけましたので』


タオルはとてもいい匂いがした。
これが女性の匂いというものなのか。

実感する。


「それにしてもいつもタオルを持ち歩いてるんだな」

女子力というのはそう言うものだろうか。少し違う気もするが。



『いいえ？持ち歩いてませんよ？』
「え？」
『このタオル、そこに干してあったタオルですよ？』


「の、のぉおおおおおおお」


背筋が凍るだけでは済まない。
なんたって“そこ”と指さしたところは立花先輩の部屋の前。
このタオル絶対立花先輩のだ。

終わった。



『そんな大袈裟な。ですがこれは私の責任なので私が責任もって謝りますよ』
「えっ、いや！そこまでしなくていいって･･････っ。ていうかそもそも俺がタオル忘れたのが悪かったんだし」

『授業があるんでしょう？』
「あるけど･･････」

『私がタオル渡しちゃったのが原因ですから！』
「･･････」


男なのに女性に任せるなんて弱っちいがした。


『ほぉら！いってらっしゃい』

無理矢理背中を押されその場から離れてしまう。
バットタイミングに授業の鐘が鳴ってしまったので渋々教室へ行く。
後で謝まろうと思いながら。


　

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