六匹目 変化の訪れ ページ6
Aside
そのあと、半間さん(敬語は外せと言われているが、慣れないからさん付けをした)に家まで送ってもらった。
幸か不幸か、母さんはまだ帰ってきていないようだった。
『ありがと。』
「これでお前の家覚えたからな。」
『……じゃ、またいつか。』
「おー。」
…彼は本当に物騒な人らしい。
家に入ると、いいタイミングで学校から電話がかかってきた。
「”平気だったか?!”」
『はい。特になにもされませんでした。』
先生はいぶかしんでいたけど、結局追及を諦めた。
大事にはしないつもりらしい。
まぁ、父さんが多額の寄付金を納めてるからだろうけど。
『じゃあ、また月曜日に。』
電話を切ったところで、扉が開く音。
母さんだ。
「ただいま。なにそんなところで突っ立ってんの。」
『ごめんなさい。セロハンテープが欲しくて。』
「あっそ。アンタの事なんか気にしてないから早く二階にでも行って。」
『はい。』
平然を装って二階までいく。
刺々しい言い方にはもうなれた。
『…嫌な家族。ふざけんな、父さんに愛されない癖に。』
小声で悪態をつく。
ベッドにぼふん、と埋まる。
けど、このまま寝てしまうのは怖かった。
嫌な気持ちで寝てしまったら、悪夢を見るから。
ベランダに出る。何気なく空ではなく地面を見る。
「おい、あぶねぇってバカ。」
「そう言うならケンチンが持っててよ。」
ふと、
もう会っていないはずの真一郎君が見えた気がした。
『真一郎く、』
「…んー?」
こちらを向いた顔が、段々と喜びの色に染まっていく。
そういえば、真一郎君には弟と妹がいたっけ。
どちらも会ったことがある。
「A、」
『!!!…しー!!!』
人差し指でジェスチャーをする。
待ってて、と体で伝えながら、財布とケータイを持って縄はしごを垂らす。
あと、クローゼットからサンダルも。
これは私がプチ家出をするときに使うものだ。
『っと、』
裸足で地面に立つ。冬も近づいているから、ひんやりと冷たい。
「久しぶり。」
『…うん。』
縄はしごをベランダに投げ置いて、ちゃんと向き合う。
「マイキー、誰だ。」
「俺の兄貴のマブダチ。…兼俺のマブダチ。」
『相変わらずだね……ちょっと離れたとこまで走ろ。あと少しで母さんが出てくる。』
サンダルを履いて、少し走る。
何かが変わる予感がした。
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あ - 面白いよ! (7月9日 16時) (レス) @page7 id: 711e38ef56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さつお_アイコンは旧都なぎ様_ | 作成日時:2021年9月10日 0時