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「誕生日の時…、何で泣いてたの？」
私はマグカップからたつ湯気を見つめながら答えを探した。
自分の感情を言葉にして、それも彼に伝わるように言わなければならないとなると途端に頭の中は混乱した。
「それは…、」
「A…、最近ずっと泣いてるよね。」
「泣いてない…、」
「泣いてる。」
「樹くん…」
「…なんで？」
彼は不意に私の肩を掴んで、向き合うように移動させた。
「…なんでって…」
「Aの気持ちが分からない。」
「…私の気持ちって…」
「ただ単純に…会えなくて寂しいとか、そういうんじゃないよね…？」
彼の瞳はすぐそばにあって、
自分がそれに映っていて、
「何抱えてんの…？また前みたいに、誰にも言えない悩みとか…1人で閉じ込めてるんじゃないの？」
彼の声が、流れる川のように私の耳を通って心に流れ込む。
彼からは絶えず甘やかな香りがしていて、私は目を伏せて彼と目を合わせることが出来ずにいた。
彼の指が私の髪をそっと梳き、その指使いがさっきまでの濃密な時間を思い起こさせた。
私は縋るように彼にしがみついて
彼はそれに応えるように、何度も、何度も彼は
「…すぐに怖くなる」
彼の瞳は揺らがず、表情も変わらないままだった。私はそのまま「私は馬鹿だから…」と、つづけた。
「怖いってなんで？」
「…もう…前の自分になりたくないから…」
「…前の自分…って」
「樹くんのせいだもん…こんなの、」
たまらずにそう言うと、彼はそこで初めて表情が揺らいだ。口が何かを訴えるかのように少し動いていた。
「…へんなこと考えて…勝手に想像して決めつけて、…勝手に怖くなる。」
自分でも何を言いたいのかわからないまま言葉を紡いでいるから、きっと彼も私が言っている本当の意味はきっとわかっていないのに
彼は何も言わずに、ぎゅう、と音がしそうなくらい抱き締めてくれた。
甘い香りに包まれ、
私はようやくそこで涙がこぼれた。
「なんだよ、変なことって」
「樹くんが…樹くんの優しいとこ、大好きだから…いつかそれがなくなったら…私は、どうなっちゃうんだろうって…」
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その言葉を聞いて彼は沈黙したが、腕の力は弱まることなく強かった。彼の香りが全身から湧き立ち、2人を包み、私は目眩が起きそうなほどの想いを感じていた。
「…ほんと…バカだよ」
彼がぽつりとそう呟いた。
私はもう冷め始めたココアを見つめていた。
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蘭の花(プロフ) - あーぴさん» ありがとうございます！わたしもそう思いながら書いているのですが…頑張ります涙(TT) (2020年7月4日 19時) (
レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - もあさん» このあとの二人がどうなっていくのか、ぜひお楽しみに。(^^) (2020年7月4日 19時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - Ailisさん» 別れるのか一緒にいるのか、どんな選択をするのか見守っていて下さい(^^) (2020年7月4日 19時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - はなさん» いったい二人はどうなってしまうのでしょうか。お楽しみに(^^) (2020年7月4日 19時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - ゆずさん» 本当に究極の選択ですよね。好き同士だけどそれだけじゃだめという現実が辛いです(TT) (2020年7月4日 19時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘭の花
| 作成日時：2019年11月16日 21時
