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「…A」
「…んー…？」
「身体痛くない？」
「へいき」
「ごめん、来たばっかなのに」
「うん。どうしたの？」
「…別に」
やがて沈黙が訪れ、部屋の外の忙しない東京のざわめきが耳に流れ込んでくる。
彼は私の髪を後ろからゆっくりとなでていた。その手つきにやっぱり、ひどく安心感をおぼえた。
それから肌寒くなり、ベッドから抜け出してリビングに行こうとした。寝たかもしれないと思ってそっと腕から抜け出したのに、彼は瞳をうすく開けていた。憂鬱そうな、気怠そうな瞳がじっと、脱ぎ捨てた服を身につける私を見つめていた。
「…なんかあったかい飲み物つくるね。コーヒーがいい？」
「コーヒーじゃないやつ」
「…コーヒー飲めないの？」
彼がむっとしたように「うるさい」言い返したので、私は少し声を立てて笑った。彼もつられて少し微笑んだが、そのまま瞳を閉じてしまったので私はリビングに行った。
愛された証に身体の芯がまだ熱く火照っていて、私はホットココアを作りながら
今日の彼の、不思議なほどに物憂げで切ない瞳を思い起こした。
あの瞳…あの眼差し、唇、指
すべてを想った。
それらが私の全てに触れたのだと思うと、不思議と胸が締め付けられた。
離れたくない
ずっと一緒にいたい
渦巻く想いが胸を支配した。
手にも足にも、重い鎖がついているような感覚で
どうしてこんな自由がないのだろう、と思う。
彼を好きだという気持ちだけではいられない自分が、ひどく嫌で
彼を好きなら、その気持ちだけで生きていけると
前の私は純粋に信じていた。
ココアをカップに注いで並べると、いくらか普通のカップルらしくて、胸が少し満たされた。「樹くん！」声を出して呼ぶと、「…んー…」明らかに寝てた声
「冷めちゃうよ…もう」「今行く…」絶対来ないやつ、これ
と思って
並べたカップをスマホで一枚だけ撮ろうとアプリを起動した時、急に背後に気配を感じて
振り返ろうとしたら後ろから抱き寄せられた。
「…何、撮ってんの？」
彼が耳元で話すので息が耳にあたり、くすぐったかった。
「これ…」
「なんでこれ？」
「…いやなんか…、カップルぽくない？」
彼はふっと笑った。
私が言いたいのはそんなことではないと、彼はすでに知っているようで
腕の力を強め、息を大きくついた。
後ろから抱き締められたまま、私は言葉を探して口を開こうとしたが、その前に勇気を出したのはやっぱり、樹くんだった。
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蘭の花(プロフ) - あーぴさん» ありがとうございます！わたしもそう思いながら書いているのですが…頑張ります涙(TT) (2020年7月4日 19時) (
レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - もあさん» このあとの二人がどうなっていくのか、ぜひお楽しみに。(^^) (2020年7月4日 19時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - Ailisさん» 別れるのか一緒にいるのか、どんな選択をするのか見守っていて下さい(^^) (2020年7月4日 19時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - はなさん» いったい二人はどうなってしまうのでしょうか。お楽しみに(^^) (2020年7月4日 19時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
蘭の花(プロフ) - ゆずさん» 本当に究極の選択ですよね。好き同士だけどそれだけじゃだめという現実が辛いです(TT) (2020年7月4日 19時) (レス) id: edbf778f76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘭の花
| 作成日時：2019年11月16日 21時
