逢坂の重みとスペア ページ19
《つなしさんですか?この度はありがとうございます。あの、遠慮なく手伝いをさせてやってくださって構いませんので》
「いやいや。君は14歳?しっかりしてるなぁ!うちの弟とは大違いだ!」
《いえ、そんな。あの、ありがー逢坂くん、経済学の先生が来られましたーすいません、失礼します》
「あ、待ってAちゃんに!ー切れちゃった」
『兄さんは逢坂ですから』
「君だってそうだろう?」
『違います。兄さんは逢坂の後継、私はこんな身体ですから、スペアにすぎません』
「それ、誰に言われたんだ?」
まだ中学生くらいの子が持っていいものじゃない。
『父に』
『今の方が楽なんです。代わりに兄が逢坂の重みを全部背負ってもらってますから』
何か言いたかったけど、言う言葉が見つからなかった。
『本、ありますか?シェイクスピアとか、演劇もの』
「図書館にあるはず。行こう。あと、ここでは君は、ただのAちゃんだ。大人が考えるようなこと、考えなくていい。分かった?」
『・・分かり、ました』
せめてここでは、ただの女の子に戻って欲しい。
そこから後、病院でよくやってるという1人演劇をしてくれた。すごく上手くて驚いて、褒めてあげたら嬉しげに笑ってくれた。
そこから先は普通に弟たちと遊んで、スイカ割ったり、沖縄料理教えてあげたりしている内に、
あっという間にあの子が帰るときが来た。
『本当にありがとうございます、龍之介さん!』
「俺こそ。妹ができたみたいで、嬉しかった。飛行機、気をつけてね。」
『はい!あの・・・
「なんだい?」
声をかけると、何か決めたような強い目が、こっちを向いた。
『次!会った時は、逢坂ってこと、忘れてください!!』
「いいよ。君はかわいい、俺の妹分で、ただのAちゃんだ」
そんなささいな約束をして、手を振る。あの子は、帰っていった。
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作者名:アスト | 作者ホームページ:http://id11.fm-p.jp/545/05251357/
作成日時:2016年9月27日 18時