eight/Time~キミトノキセキ~:new ページ30
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「マサキくん!」
「あ、ショウちゃん来てくれたんだ」
「もちろんだよ」
引っ越しの荷物はもう送り終わった。
あとは俺が次の街に行くだけ 。
見送りに来てくれたショウちゃんの大きな瞳に、うっすらと涙の膜が張っていた。
彼は俺の首に下げられたカメラを見てニコリと微笑む。
「いつか、前みたいに人の写真撮れるようになるといいね」
彼の精いっぱいのエールに俺は心の中で謝る。
こっそり撮ったショウちゃんの写真を本人に見せるつもりはないから。
いつか堂々と人を写せるようになったら、そのときに君に見せにくるよ。
「ねぇ、ショウちゃん。これ、受け取ってもらえる?」
「え…これ…」
俺が差し出した懐中時計に彼は大きな目をぱちくりとさせた。
「俺にはもう必要ないからさ。ショウちゃんのお陰でこれがなくても前に進めると思うんだ。新しい場所に行かなくちゃ。俺の方こそ、ありがとう。だからお礼って言っちゃおかしいけど....」
彼の俺より少し小さい手に懐中時計を握らせる。
俺の目を見たショウちゃんは、素直に懐中時計を握ってくれた。
「ありがとう…」
いつもと同じあのキラキラした笑顔を見せてくれた。
なんとなく照れくさくて視線を逸らす。
懐中時計の針が定時を告げた。
「じゃあショウちゃん、俺そろそろ行くね」
「うん…。頑張ってね」
それはきっと、彼の精いっぱいの応援の言葉。
飾りのないまっすぐな言葉。
それが深くゆっくりと胸に染みた。
ああ、彼に出会えて本当によかった。
もしショウちゃんに出会っていなかったら、俺は今までと同じように後ろを向いたままだったんだろう。
「ショウちゃんも…見つかるといいね、お祖父さんへのプレゼント」
ショウちゃんならきっと見つけられる気がして、彼のまねをして精一杯笑って見せた。
バス停にバスがゆっくりと停車した。ステップに足を乗せて振り返る。
「じゃあね、ショウちゃん」
「これ大切にするね。ありがとう、マサキくん!」
パァーッとバスの出発音とともに扉が閉まった。
窓の向こうでショウちゃんが懐中時計を揺らして笑っていた。
ほとんど泣き笑いだったけど、とても温かな笑顔だった。
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恋文(プロフ) - こんにちはー。一言言ってよー笑 お姉さん寂しいから 笑 続きがとっても楽しみです!更新、頑張ってください! (2014年1月29日 10時) (レス) id: 1e4c88a64e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夕霞樹雨×朝霞時雨 | 作成日時:2014年1月28日 16時