夢でもあなたを想う 3【ふしぎ遊戯】 (ページ17)

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119話ページ17

攻児が意味深に言ったのを横目に、翼宿はいそいそと部屋を後にしたのだ。

廊下の突き当たりには、いくつか部屋が並んでいる。本来は従業員用の仮眠室なのだが、山の連中で飲むと何回かに一度はぶっ倒れたり眠りこけたりする奴が出るので、頼んでそこも貸してもらうことがある。馴染みの店があると便利だ。

いつもなるべく迷惑をかけぬようにしているとはいえ、山賊相手に親切な店やなと、翼宿は少し可笑しく思う。

扉を開けると、奥には簡素な寝台がある。よく眠っているので明かりはつけずに、そっと彼女を寝台へ下ろした。

さっきまでの騒がしさが嘘のように、ここは静まり返っている。聞こえてくるのは、Aが規則的に洩らす小さな寝息だけだ。

「……変わらんなあ」

あれから二年。でもAは半年しか経っていないという。だったら変わらないのも当たり前なのだが、なんとなくそう呟いた。

顔にかかってしまった髪を指先で払うと、少しくすぐったそうに眉を寄せる。

その表情に翼宿が少し笑みを洩らしたのも束の間、突然Aがうなされるように寝返り、眉を寄せて何事か声をあげた。

それは一度ではなく、何度も。不明瞭だが、何を言っているのかだいたいの予想はつく。

「……はぁ……」

この期に及んで、呼ぶのはあいつか。

あんな奴、どこがええんや。

――でもって俺は、何故こんなことを思ってしまうのだろう。何故こんなにも彼女の事で、胸が苦しくなるのだろう。

そんな事を思い、爪が食い込むほど強く拳を握って、翼宿は思いきったように腰を浮かせた。