114話 ページ12
「ありー? 幻狼。二人か?」
既にかなり飲んでいる様子の攻児が、部屋の奥でのっそり立ち上がる。
その他大勢は、Aの参加に驚いて目を丸くしたり、鼻の下を伸ばしたり……とにかく各人忙しい。もっとも、A本人は萎縮して気付いていないのだが。
「井宿はんも一緒に来るかと思ったんに。お前に任せるとか病気か?」
「その通りや。あいつ風邪ひきよってん」
「へーっ!あの井宿はんが風邪!人並みに病気しはるねんなぁ……」
翼宿は適当な場所に腰を下ろしつつ、ちらとAを見やった。つまみを貢ぎに来る連中を監視しながら飲むのは難しそうである。
それでも攻児が有無を言わせぬ風に杯を差し出してきたので、とりあえず軽く一杯は飲むことにした。
「なぁ。なんやAはん、元気ないように見えんねんけど」
翼宿にしか聞こえぬよう小声で、眉をひそめている。
「お前にそう見えるんなら、よっぽどやな」
「うわっ、幻ちゃん。俺は君より人生経験豊富なんよ?」
攻児はからかうように笑って、今度はAに話を振る。
「なー!AはんAはん。やっぱり、幻狼じゃ不足なんか?」
「えっ? あ、いやとんでもない……というか、お邪魔してすみません」
下っ端の誰かの小話に笑っていたAが、慌てて振り返りながら返事をした。
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