可能性の話 ページ18
「吉報、Aさんが笑った。」
「悲報、表情筋が攣るだけだった。」
「さらなる悲報、作兵衛が態度悪い。」
「ほっとけこの野郎。」
食卓についた途端、口々に話し始める3年生。
藤内、孫兵、左門、三之助、数馬は嬉しそうだが、作兵衛だけは心なしか機嫌が悪い。
「なんで作兵衛はAさんが嫌いなんだ？」
藤内が聞いた。
「嫌いじゃない。」
作兵衛は端的に答える。
「嫌いじゃないが、信用できない。
それだけだ。」
「えー、それは偏見というやつだよ。」
「そーだそーだ。
どうせ作兵衛は、俺たちが天女の妖術に罹ってると思ってんだろ。」
数馬がブーイングを飛ばし、それに三之助が乗っかった。
それに対し作兵衛は、少しむっとした表情で言い返す。
「確かに、お前たちは妖術に罹ってないかもな。
でも、それをちゃんと証明できるか？」
「そんなの、説明すれば…」
「もしかしたらその説明も、妖術で良いように辻褄合わせされてるかもしれない。」
5人はぐっと言葉に詰まる。
少し考えて、孫兵が言った。
「逆に、ぼくたちが妖術に罹っていると証明できるのかい？」
「できないよ。」
作兵衛はすぐさま答えた。
5人は意外な顔をする。
「つまり、罹っているか罹っていないかなんて、証明できないんだ。
でも、予測はできる。
例えば、お前らが天女の妖術によって心を支配されていて、天女の命令で俺を引きずり込もうとしてる、とかな。」
5人は少し顔を青ざめさせた。
「で、でも、そんな記憶無いし…」
「それが脳内に直接命令されてて、記憶がないまま、無意識的にやってるものだとしたら？
今この瞬間も、早く引きずり込めと命令しているかもしれない。」
5人はバッと台所を見る。
しかし、Aは奥に隠れて、姿が見えない。
「…そんな、怖いこと言うなよ。」
「声が震えてるぞ、三之助。」
顔が青ざめ、暗い雰囲気を纏った3年生の中で、平然とご飯を食べ続ける作兵衛だけが異様に映る。
「え、ちょ、うそだよね？僕たちをからかってるんでしょ？」
「あくまで可能性の話だ。」
「あ、そうなの？なぁーんだ、こわかっ…」
「可能性だから、ありうる話だぞ。」
「本当やめてよ！」
緩みかけていた空気が再度凍った。
不意に、背後から押し殺すような笑い声が聞こえる。
振り向くと、6年生がこちらに耳を傾けて話を聞いていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 127人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
河鳴 - ルビーさん» はじめまして！いつも楽しんでるなんて素晴らしいお言葉、ありがとうございます！！もう少しで終わるはずなので、今後ともよろしくお願いします！ (2015年5月7日 5時) (
レス) id: 16ae572954 (このIDを非表示/違反報告)
ルビー - はじめまして！！ いつも楽しんで読ませていただいています！！(`・∀・´) 時間がなくてあまりコメントなどで応援？できませんが、これからも楽しみにして待っています！(´∀`*) (2015年5月6日 23時) (レス) id: 00f0791501 (このIDを非表示/違反報告)
河鳴 - 蜻蛉さん» 面白いなんて…ありがとうございます！読者様をもっと楽しませることができるよう精一杯頑張ります！ (2015年5月5日 15時) (レス) id: 16ae572954 (このIDを非表示/違反報告)
蜻蛉 - とても面白いです！いつも続きが気になっています！これからも頑張ってください！！ (2015年5月4日 22時) (レス) id: fbf176a846 (このIDを非表示/違反報告)
河鳴 - タスクさん» 終始にこにこしてる留さんってぞわぞわしません？夢主ちゃんはちょっと性格悪めにしてますw口に出ない分、心の中では言いたい放題なのでww (2015年5月2日 23時) (レス) id: 16ae572954 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：河鳴 | 作成日時：2015年4月25日 14時
