はぁ…また天女サマですか。【忍たま乱太郎】

四話 ページ6

『本題と言いましてもいくつかの質問をするだけです。
警戒するなとは流石に言いませんがそこまで気負わないで聞いてください。
勿論、答えたくない場合は質問を却下してくださって結構です。』

グダグダと前置きが長すぎるようだが、おそらくこれが正解だ。
正しく言えば、忍術学園の面々に対して“丁寧な態度”をできるだけ多く見せる。
少しでも向けられる敵意が減るように、今私が一番優先すべき事項である。
現に五年生の視線にわずかな戸惑いの色が見える。
警戒心がだんだんと下がってきている証拠だ。

「了解した。話してみよ。」

『ではまず一つ目。皆様の口ぶりからして私の前にも天女サマとやらがいたのですか？』

「その通りじゃ。」

学園長がコクリと頷くのを見て話しを続ける。

『やはりそうですか...まどろっこしいのは嫌いですので単刀直入に聞きますが、
彼女、もしくは彼らでしょうか？その人たちはあなた方にどのような損害を？』

「....天女たちは皆女人じゃったよ。
損害...そんな聞かれ方をされるとは思わなんだ....
そうじゃな、ここでの詳細な説明は省くが、一つ言うなれば、“洗脳”の類かのぉ....」

“洗脳”か、そのひと単語だけでなんとなく察せる所はある。
具体的な被害を明言しなかったのも、おそらくは周りにいる五・六年生に配慮しての事だろう。
私の質問を聞くと同時にある者は顔を背け、またある者は唇をかみしめ....
なるほど、以前の天女サマたちは存外、彼らにトラウマを植え付けたらしい。
――自分の好きなものを汚されるというのは、気持ちのいいものではないな。

『わかりました。それ以上についてはこれから先、私の方から聞くことはないでしょう。
次に二つ目の質問ですが、何故あなた方が言うところの天女である私をこの学園内に案内したのでしょうか？
話を聞く限り、私を招くというのはデメリットはあれどメリットはないように感じます。』

「....お主が居った森は“裏々”山と呼ばれる、学園の生徒たちも良く行く場所じゃ。
おぬしを放置した場合、万が一でも下級生たちに危害が及んでは困るのでな。
そういう判断じゃろう？のぉ、潮江文次郎。」

学園長の問いを頷くのみで済ませる潮江文次郎さん。
まだまだ彼らの警戒は固い。

『分かりました。今はまだ(・・・・・)そういう事で。
私に話しても良いと判断なさった時にまた、ということで。』

「...山本シナ先生。彼女を宿舎へ案内してやりなさい。」

話は終わりのようだ。

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