TAKE‐ 土砂降り ページ12
ガタン！
審神者は呼吸も荒く、自室の扉を閉めて中に入った。手入れ部屋から誰にも見られないように自室へ走って来たので、審神者は肩で息をしている。
「ひっく」
静かな自室に審神者のしゃくり声が響いた。
まるでそれが何かの栓だったかのように、次の瞬間には審神者の目からは次々と涙が零れてきた。
「……嘘つき」
そのつぶやきは、にっかり青江と審神者自身、どちらに向けられた言葉であっただろう。
今日、第二部隊が検非違使に遭遇し、ぼろぼろになって帰還した。それを告げられるなり、審神者は隊員たちのところへ急いだ。だが、手入れ部屋前の廊下で手入れを待つ血まみれの刀剣達を見て、審神者は固まってしまった。
審神者は血が怖い。
別に血液恐怖症ではない。ただ、誰かが死んでしまうところを連想して恐怖に呑まれてしまうというだけの理由だった。
あまり現世では困らなかったが、本丸に来るとそうもいかなかった。
毎日毎日刀剣達を導いて戦い、彼らが傷ついたら手入れをする。ただそれだけの事でも審神者は刀剣の内の誰かを失ってしまうかもしれないと戦々恐々とする羽目になった。
この本丸で、どのくらい気づいている刀剣がいるだろう。
審神者は妙な所で意地っ張りなので、自分の弱みを見せることを嫌った。
意地っ張りの挙句、いつも面を被り、表情を悟られないようにしていた。、
一年前のあの日は、そんな審神者にとって衝撃的だった。
名乗るなり審神者の面を引っ掴んできたにっかり青江。審神者は彼を心の中で天敵に認定していた。
しかし、長い間ギャーギャー騒いでいるうちに絆されて、むしろ彼と喧嘩するのが楽しいとさえ思うようになってしまっていた。
「嘘つき」
さっきの出来事を思い出して、審神者はまた呟いた。
全部全部、聡い彼にはお見通しだったのだ。弱い所を突かれ、下手に言い訳をすることしかできない審神者に、にっかり青江は審神者に噛み付き、本当の審神者を見た。
こんな弱い姿を見て、きっと幻滅されただろう。
そう思うとまた泣けてくるようで、審神者は膝を抱えた。
俯き際に、部屋の端に置かれた姿見に、審神者は自分の姿を見た。
首に赤々とした歯形が残っている。
審神者はけっこう痛かったな、と見当違いな感想を浮かべたが、すぐにそれを頭から振り払った。
「……ごめんなさい」
審神者は鏡に指を這わせたが、俯いくとまた涙声で言った。
「ごめんなさい」
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いなほん(プロフ) - 最゛高゛で゛す゛……!!!!素敵なにっかりさんをどうもありがとうございました！ (2016年12月4日 17時) (
レス) id: eb5ee429dc (このIDを非表示/違反報告)
新鮮な鉛筆(２B)(プロフ) - 拳銃さん» すみません、御指摘ありがとうございます。次のお話で、書き方を変えてみます…。 (2016年9月16日 21時) (レス) id: 873a9a633f (このIDを非表示/違反報告)
拳銃(プロフ) - もう少し間を開けた方が読みやすくなりますよー。はっきり言ってこれ読みにくいですね。二、三行で良いので間隔取ってくださいね(´-ω-`) (2016年9月15日 23時) (レス) id: d214872701 (このIDを非表示/違反報告)
ルサルカ(プロフ) - 新鮮な鉛筆(２B)さん» ありがとうございました！電車の中なのにニヤケちゃいました！www更新のんびり待ってるのでのんびり頑張ってくださーい！応援してますw (2016年9月9日 19時) (レス) id: 2218d295b6 (このIDを非表示/違反報告)
新鮮な鉛筆(２B)(プロフ) - ルサルカさん» 「待つ」ですか、リクエストありがとうございます！また時間が開いたら書かせていただきますね。 (2016年9月4日 8時) (レス) id: 451b47dddc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：新鮮な鉛筆(２B) | 作成日時：2016年8月10日 13時
